休業手当を非正規社員に意図的に支払わない企業の思惑

首都圏青年ユニオンが実施した2020年4月から12月までの「ホットライン労働相談」は440件。事業主や失業者を除いた労働者のうち、71.0%をパート・アルバイトが占める。

ビールを注ぐ日本のバーテンダー
写真=iStock.com/kazuma seki
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最も多い相談が「事業主都合休業」の65.0%、続いて「解雇・雇い止め・退職勧奨」の18.3%。

ダントツの相談数だった事業主都合休業の内訳は「休業手当なし」が87.3%と最も多く、続いて「完全休業」(76.1%)、「部分休業」(24.9%)の順だった。

首都圏青年ユニオンの原田仁希執行委員長はこう語る。

「2020年4月以降の相談はシフト労働者の休業手当の未払い問題が急激に増えた。業種では飲食、宿泊、アパレル関連が多く、パート、学生バイト、フルタイムで働いている人の3つのグループに分かれるが、フルタイムで働いている人でもシフトという理由で休業手当が支払われていない」

なぜシフト制の非正規に休業手当を支払おうとしないのか。実はシフト制労働者との労働契約の内容が法的にグレーゾーンであることを利用して休業手当を支払わない企業が増えているのだ。

使用者は休業手当を支払う義務があるが、この場合の休業は労働契約書に定めた「労働時間・労働日(所定労働時間・所定労働日)」より「実際の労働時間・労働日」が少ない場合に発生する(「所定」と「実際」の違いに注目してほしい)。

ところが、シフト制労働者の労働時間や労働日は週または月ごとにシフト表に書き込まれる。そのため労働契約書に労働時間や労働日を記載していない企業もある。

あるいは「シフトによる」と記載しているケースや労働時間・労働日が記載されていても、「ただし、シフトによって変動する可能性がある」と記載している企業もある。

つまり翌週ないし翌月のシフトが組まれていないことを挙げて「もともと予定されている労働がないので休業ではない」という理屈で休業手当の支払いを拒否する企業が多いのである。