「休業手当を受け取れる」と周知しない、非正規社員への露骨な差別

野村総研の調査では休業手当を受け取ることができることを知らなかった人の割合は男女とも50%超に達している。ということは会社が周知していないということであり、野村総研も政府広報やメディアなどで広く周知することを提言している。

しかし、実際の現場に深く分け入ると、周知していないどころか、正社員と非正規社員を露骨に差別している実態が浮かび上がる。

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首都圏青年ユニオンのコロナ禍の2020年4月以降、積極的に労働相談を実施しているが、たとえば大阪府の飲食店でアルバイトをしている30代の女性からこんな相談を受けた。

「お店が休業になってしまい、今は休んでいる状態です。休業手当は出ないのですか、と聞いたら『パート・アルバイトは出ない』と言われている。雇用調整助成金を使ってもダメなんですか? と聞いたら『アルバイト全員に出すと、助成金をもらうまでに会社が潰れてしまう』と言われた」

相談内容から察すると、正社員に休業手当を支給しているが、非正規社員には支給していない。明らかな非正規社員差別である。

労働基準法には「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上を支払わなければならない」(26条)と明記。正社員と非正規社員を区別していない。

しかも国から雇用を維持する企業の休業手当を支援する「雇用調整助成金」(雇調金)が支給される。

現在、まん延防止等重点措置と緊急事態宣言の対象地域で労働者1人あたりの日額上限を1万5000円、助成率を最大10割まで拡充されている(対象区域外は1万3500円、助成率最大9割)。

もちろん支給対象は正規・非正規に関係はない。非正規社員のシフトが以前に比べて週1日減れば、1日分の休業手当を支給し、後で雇調金をもらえばよい。その間の資金繰りが厳しければ実質無利子・無担保融資の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を利用すればよい。

にもかかわらず休業手当を支払わない企業も少なくない。