あえて解雇や雇い止めせず、労働者自ら辞めざるをえない形に追い込む
企業の中には「シフトがなくなっても、法的リスクなどを考えて、あえて解雇や雇止めをしない企業もある。結果として労働者自ら辞めざるをえない形に追い込まれる」(原田委員長)という。
首都圏青年ユニオンには休業手当が出ない関西の30代の女性からこんな相談もあった。
「売り上げが低迷し、正社員だけの店舗運営になっているが、私たちは休業手当が出ていない。25日分の有給休暇を取得したが、それ以降は収入がゼロの状態が続いている。いつ働けるかはわからず、店長に聞いてもわからないと言われた。それなら『条件付きで解雇してくれ』と言ったが、『店舗が再開したときに働いてほしい』という理由で解雇はできないと言われた」
休業手当を払ってもらえないので生活も苦しい。それなら退職し、失業手当をすぐにでも受け取って生活をしのぎたいと誰もが考えるだろう。
しかし、それでも「会社都合退職」にはさせないで「再開まで待ってほしい」というのは、それこそ“生殺し”状態に等しい。
振り返れば、2008年のリーマンショック時に派遣切りが相次ぐなど非正規社員の脆弱なセーフティネットが露呈され、社会的に大きな問題となった。
その後、政府は雇用や賃金保障に関する雇用安定策を講じてきた。2019年には正社員との処遇格差を是正する目的で同一労働同一賃金の法制化も施行された。
しかし、一連の政策が結果的に穴だらけだったことが今回のコロナ禍で炙り出された。非正規社員は正社員の雇用を守るための“雇用の調整弁”と言われてきたが、それがコロナ禍で多数の“非正規難民”を生み出している。