レジェンドですら時代に適応しようともがいている
私たちは新たなものにチャレンジして、自分を向上させていくことが必要です。マンネリ化せずに、いろいろなことを実践しながら、己の知を新鮮に保つこと。時代の要求に応えていくということです。それは一時代を築いた人も同様です。
棋界のレジェンド・羽生善治さんは、数年前に「竜王」の座を追われて以来、タイトル戦の舞台から遠ざかっていました。その期間、羽生さんが語った言葉はあまりに印象的です。10代の藤井聡太さんの将棋を「学びたい」と言ったのです。
AIの進化で戦術が大きく様変わりした今の棋界で、羽生さんはそのAIに強い関心をもち、「過去にこのやり方で勝てたという経験にあまり意味はない。最先端の感覚を取り入れなければ生き残れない」と説いています。
史上初の永世七冠にして棋界のレジェンドと呼ばれる羽生さんでも、今の時代に適応しようとしている。この柔軟性こそが、頭がいい人の特徴です。
環境が変わってきたときにどう行動できるのか、環境が変わっても「こうすればいい」「ああすればいい」と行動ができる。この問題解決能力は非常に大事なことなのです。
頭をよくするために実践すべきこととは何か
「あなたは今、何を意識してその作業をしているのか」と聞かれて、瞬時に答えられる人は「頭がいい人」です。ピアノの練習中にそう聞かれたとき、「このパートをスムーズに弾けるように左手の薬指を意識しています」とすぐに答えを返すことができる人は、常に課題をもちながら練習している人であり、頭の中も整理されている人です。
スポーツにおいても、たとえばゴルフのスイングを練習している人が、何も考えずに1000回振っても、筋力はつきますが上達はしません。一方、「上半身は腕とクラブを同調させるように意識して振っている」人は、ひと振りひと振りに意味をもたせています。
上達は練習の「質×量」で決まりますから、質がゼロなら答えも限りなくゼロに近くなりますし、後者のように意味をもたせた練習を1000回すれば、必ずショットは上達することでしょう。要は、自分のやるべきことを鮮明にしておくということです。