質問に40秒かけて答えたらすべてカットされた

たとえば、トークを時間軸で捉えながら、10秒や15秒という枠の中で、言いたいことをズバリと言い尽くすことです。

齋藤孝『本当に頭がいい人の思考習慣100』(宝島社)
齋藤孝『本当に頭がいい人の思考習慣100』(宝島社)

話をスタートする前に、15秒後の着地点を意識し、そこから逆算して要点をまとめ、最後にクスッと笑えるオチまでつけて話ができる人。すべてとはいいませんが、テレビの世界で残っている芸人さんの多くは、こういうタイプの人ではないかと思います。

そういう意味では、実は私も、過去にテレビで大失敗をしたことがあります。まだテレビという世界に慣れていない頃、ある番組で司会者から話をふられ、それに対し知っていることを私なりに答えたのです。

自分としては、そつなく話せたかなと思っていたのですが、あとで知ったところでは、それがすべて編集でカットされていました。理由は、私の話が長すぎたのです。ひとつの質問に対して40秒ほどかけていたため、間延びして番組が構成できなかったようです。

これはつまり、私が制作サイドの意図を正しく把握できていなかったということになるわけです。言い換えれば、相手の気持ちがわからなかった、求められているものを正しく理解できていなかったということになり、大いに反省したことを今も覚えています。

場面に応じて求められるものは違ってくる

今紹介した例は「テレビ的な頭のよさ」ということになりますが、これがラジオであれば、時間枠は15秒よりはもっと長くなるでしょう。

さらに、大学の授業や講演会で、学生や聴衆の前で話すとなると、時間の捉え方はまた大きく変わってきます。中身のある話を100分間話し続けるのは、15秒の世界とは異なる力が求められます。

つまりは、その場その場で求められることが違うということ、それを私たちは理解しなければなりません。陸上競技であれば、短距離走者とマラソンランナーに求められるものは同じではありません。

ここで今、自分に求められているものが何なのか、それがズレずに判断できる。もし自分ができそうもないということであれば、「これは私の担当ではないな」と気づくこと。自分がすばらしいと思っているものでも、別のすべての場で通用するわけではないということがわかる人。こういう人は頭がいいといわれる人の中に多いのです。