近年、女性の総合職採用に力を入れる企業が少しずつ増え始めています。ただ、女性の選択肢が一般職と総合職に広がる一方で、男性はいまだに「総合職一択」の状態。男性一般職がごく普通の選択肢になる日は来るのか、男性学の研究者、田中俊之さんが解説します――。
男性は総合職であるべきという思い込み
少し前、大手総合商社の丸紅が総合職新卒採用で「女性半数」を打ち出して話題になりました。従来は、男性は総合職、女性は一般職という採用方法が主流でしたが、近年は職種におけるこうした性別分業は少しずつ崩れ始めています。
これは、女性の選択肢が広がるという意味でとてもいいことだと思いますが、逆に男性の選択肢はどうでしょうか。この点を考えてみると、やはり男性の職種はいまだに総合職が「普通」で、一般職は決して選びやすい選択肢とは言えないように思います。
日本には、「男性は総合職であるべき」という固定観念が根強く残っています。多くの親は、娘が大企業に勤務する男性を結婚相手として連れてきたら歓迎するでしょうが、その男性が一般職だったら難色を示すのではないでしょうか。本人たちも、親の反応を気にして何となく引け目を感じてしまうかもしれません。
男性一般職にある“引け目”の正体
こうした状況は問題だと思います。職種も配偶者も、選ぶ上でいちばん大事なのは本人の納得感で、この時に周囲を気にすると選択肢が減ってしまいます。本来、理想的なのは、誰もが自分が選んだ道を自信を持って歩める社会です。なのになぜ、男性一般職には引け目のようなものがつきまとうのでしょうか。
一つには、まだ人数が少なく「珍しい選択肢」として見られるからです。人数が増えていけば、女性にとっての総合職と同様に「普通の選択肢」になるはずですが、現状はそうは進んでいません。