国民を救わない財政均衡の罪

コロナで苦しむ家計を助けるために、あるいは国民に十分なインフラを享受させるために、大幅な財政出動が要請されるとき、財源となる税収が不足し政府は破産するという意見が必ず出てくる。つまり「政府は財政均衡を保つべきだ」というのが常識と考えられている。

世界遺産にも登録された日本最大の前方後円墳、仁徳天皇陵古墳(大山古墳、大阪府堺市)
時事通信フォト=写真
世界遺産にも登録された日本最大の前方後円墳、仁徳天皇陵古墳(大山古墳、大阪府堺市)

しかし、経済学でいわばダークホースの学説、MMT(現代貨幣理論:Modern Money Theory)によると、政府赤字が出ても、政府は紙幣を発行すればいいので、通貨発行国は破産することはない。政府が貨幣を発行しすぎるとインフレーション(以下、インフレ)が起こって国民を困らせることはある。インフレが起きないならば、財政赤字は国民の福祉を助けるというのである。

しかし読者は、それでも政府が無駄遣いしてもよいのかと問いかけてくるだろう。たとえば、トランプ前米大統領は、個人的利益のために、主要7カ国首脳会議(G7サミット)を自分が所有するフロリダやスコットランドのリゾートでやろうと試みた。このように、一般に政府は民間の経済主体と異なり利益を求めて経済合理性に従って行動しないから、財政支出が政治的な利害だけで決定されて、無駄に使われる可能性も高い。