プレジデント誌特別講義、炭素税の経済学的考察

地球温暖化に対する菅首相の意気込みは大きい。2050年までに温室効果ガスの排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)、30年までにも温室効果ガス排出46%の大幅減(13年度比)を図ろうとする大胆なプランである。これは、アメリカで環境問題に消極的だった前トランプ政権に代わり、現バイデン政権が環境保護へ積極的な態度に変わった今、まさに時宜を得た政策であるといえよう。

しかし、菅内閣の理想とする目標を実現するのは、容易とは思えない。地球温暖化の防止には二酸化炭素の削減が必要といわれるが、具体的にどんな手段があるのだろうか。

第1に、環境を汚染する主体に直接的な規制をかける手段がある。汚染行為を禁止し罰則を設けるのである。第2には汚染の主体にその大気汚染の量に応じて課税するという、価格機能を利用するやり方、すなわち環境税とか炭素税といわれる方法である。第3には、大気汚染枠をあらかじめ各国家や各企業に与えて、それを取引させて汚染を伴う産業行動を最も合理的に行えるやり方を市場で見つけようとする排出権取引による方法である。

本稿では、世界的には実用化されていながら、日本人にはいまだ理解が不十分とみられる炭素税の経済的メカニズムを解説する。同時に、読者にもなじみのある消費税の経済的機能と炭素税のそれの比較を行ってみよう。