税の天国として稼ぐアイルランド

わたくしの子どものころは、都内でも庭でほたるを楽しむことができた。「ほー、ほー、ほたる来い。あっちの水は苦いぞ。ほー、ほー、ほたる来い。こっちの水は甘いぞ」という日本古謡がかすかに耳に残っている。

ほかの国より良い条件で租税引き下げを受け入れますので、ぜひわたくしの国に投資してくださいという競争は、まさにこの歌を思い出させる。カリブ海諸国などが観光立地を利用し自国内への投資収益に対して、極めて低い税率を課したり、ないし無課税の措置をとることは、「タックス・ヘイブン」の名で知られている。英語の「ヘイブン」は、天国(ヘブン)ではなく「(税からの)避難港」の意味であるが、フランス語では「パラディス」と言ったり、スペイン語では「パラディソ」と言ったり、まさに税の天国(パラダイス)と呼ばれているという。

この制度で利益を受けているのは、小国や観光地などに限らない。先進国であるアイルランドは、外国企業に対する税率を12.5%に保つことにより、2020年は年間で118億ユーロも法人税収があったという。

こうしたタックス・ヘイブンと呼ばれる投資受け入れ国が他の受け入れ国より法人税率を低めようとして競争すれば、各国の法人利率はゼロに向かって収拾がつかなくなる。