ストリーミング配信で多くの人が注目

2020年は映画業界にとって苦しい1年だった。コロナ禍で映画館がオープンできず、ストリーミングは一気に主流になった。また大作の公開が相次いで先送りとなり、昨年の公開本数は前年の3分の1にとどまった。そんな中、比較的低予算のピープルオブカラーや女性を主役にした作品がストリーミングで公開され、自宅巣ごもり中のアメリカ人に注目されることになった。

一方、ブラックライブスマター(BLM)運動でアメリカ人のダイバーシティに対する意識が飛躍的に高まり、こうした作品への需要も増えた。特に『ユダとブラック・メシア』は、1960年代の公民権時代に人種差別と戦いながらコミュニティー起こしに力を注いだ黒人の若者集団「ブラックパンサー」を描いた映画で、これまで白人にとっては危険な存在でしかなかった彼らのイメージを大きく変えた。

作品賞は取れなかったものの、パンサーのリーダー役を演じたダニエル・カルーヤが助演男優賞を受賞した。

またユン・ヨジョンが助演女優賞をとった『ミナリ』は韓国からの移民家族の物語で、これまでほとんど知られていなかったアジア系移民の暮らしにスポットが当たった。これも2020年という年だったからこそ実現した快挙だろう。

期待を裏切るどんでん返しも…

ダイバーシティは、作品だけでなく会場のセレモニーでも大いに発揮された。

今年はパンデミックを受けて、ロサンゼルスのユニオンステーションという小さな会場で、大掛かりなステージも作れず華やかなパフォーマンスもなかったが、プレゼンターの半分を占めるピープルオブカラーの存在が目立った。

前回アジア系男性として2人目となる監督賞をとったポン・ジュノは、監督賞にノミネートされた全員のプロフィールを韓国語で紹介、またドキュメンタリー部門のノミネート作品は、すべて手話で紹介されるなど前代未聞の演出が話題を呼んだ(ちなみに作品賞ノミネートの『サウンド・オブ・メタル』は、聾唖ろうあ者でドラッグ依存症の人々を描いている)。

しかし最後にはどんでん返しも待っていた。

誰もが受賞は確実と信じていたチャドウィック・ボーズマン(がん闘病の末、昨年43歳で死去した黒人俳優)ではなく、大御所で史上最高齢のアンソニー・ホプキンスが受賞。本人も全く期待していなかったそうで会場にも来ていなかった。

授賞式の演出上、例年は作品賞が最後に発表されるが、今年は主演男優賞を最後にすることで、ボーズマンの追悼とダイバーシティを祝ってのエンディングを狙ったのだろうが、それが覆され尻切れとんぼの結末になっただけでなく、何よりも「黒人は結局受賞しない」という一般認識を強烈に裏付けることになってしまった。