監督賞は初めてアジア系女性の手に

2021年のアカデミー賞は、女性として史上2人目、アジア系女性としては初めて監督賞をとったクロエ・ジャオ(作品『ノマドランド』)や、助演女優賞に輝いたユン・ヨジョンなどが脚光を浴び、「史上最もダイバーシティあふれるオスカー」と大きく報道された。

2021年4月25日、米国カリフォルニア州ロサンゼルスのユニオンステーションで開催された第93回アカデミー賞授賞式のプレスルームでポーズをとる『ノマドランド』で最優秀作品賞と監督賞を受賞したクロエ・ジャオ氏。
写真=EPA/時事通信フォト
2021年4月25日、米国カリフォルニア州ロサンゼルスのユニオンステーションで開催された第93回アカデミー賞授賞式のプレスルームでポーズをとる『ノマドランド』で最優秀作品賞と監督賞を受賞したクロエ・ジャオ氏。

しかしつい5年前には、「Oscars So White=オスカーはとても白い(白人受賞者が多すぎる)」と強く批判され、その論争はつい最近まで続いていたのを覚えている人も多いだろう。アカデミー賞は一体どうやってそれを克服したのだろうか。

そのハッシュタグ「#OscarsSoWhite」がSNS上で広く拡散されたのは2016年だった。前年に公開された映画から選ばれたノミネートは、女優、男優全員が白人だったからだ。

アメリカはこの年、オバマ政権最後の年に入ったところだった。ピープルオブカラー(有色人種)が人口の4割に迫る勢いで、アメリカの顔はもう白人だけではないと言われるようになってからも久しかった。

映画を見る客にこれだけ非白人が増えているのに、なぜハリウッドだけが白人ばかりを押しつけてくるのだ? という批判は大合唱に変わっていった。

なぜアカデミー賞は「白い」のか、それには2つの理由がある。

配給会社も制作陣もみな白人ばかり

まず、ハリウッドの映画業界が白いからだ。

大手配給会社のトップは年配の白人であるところから始まって、プロデューサーもディレクターもキャスティングエージェントも多くが白人だ。彼らが作る映画は自然と白人目線のものになり、主役も白人になる。2011年に公開された映画で、ピープルオブカラーの主演はわずか11%だった。

一方女性に関して言えば、2011年の女性の主役は3割、しかも40歳を超えると役がないというエイジズムに直面し、#metooではセクハラの犠牲になっていることも明るみに出た。同様にアカデミー賞の投票メンバーも白人男性に偏っている。2016年当時、約8000人のうち女性は25%、ピープルオブカラーになるとわずか8%だった。

その結果、93年の歴史の中で、主演男優賞を受賞した黒人はわずか4人、主演女優賞は1人、また監督賞を受賞した女性も2人しかいない。

これを変えなければ未来はないと悟った映画業界は、改革に着手する。