借金は返さねばならない

「なぜ借金を返さねばいけないのだ」
「返さなければいいではないか」

財政出動を叫ぶ人たちからこんな主張をよく聞く。とんでもない。借金は返さねばならない。民間でも、国でも当たり前の話だ。

国が借金を返せない事態にはデフォルトという言葉さえある。借金を返してくれないことが事前にわかっている相手に金を貸す人はいない。一度でも返さねば、二度と借金などできなくなる。

「国が借金を返せないのなら借り続ければいい」という人もいる。それもまず不可能だ。国の借金は国債発行で行われ、その国債には満期がある。永久債など発行されていない。日本の場合、最長40年、主力の借金は10年である。

時は金なり
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満期の時、償還資金で再び国債を買う投資家もいるだろうが、それは投資家サイドの権利であって義務ではない。国が同一投資家から借金を継続できるか否かは資金の貸し手である投資家如何で決まる。

満期が来た元本金額を返すために国は必死で償還原資を集める。集まらなければ新規国債の金利をどんどん高め、魅力的にせざるを得ない。償還原資が集まらねばデフォルトになってしまうからだ。

借金が巨大になっていくと、資金調達が自転車操業になっていく。しかも日本国の場合、現在はほぼゼロ金利だからよいものの、金利上昇期には支払金利が急増し、国の資金繰りは急速に苦しくなる。

借金を返す3つの選択肢

借金がたまりすぎた場合、その処置方法としては大別すると3通りある。

一つめは大増税で借金を減らしていく方法。これが国の姿としては最もまともだ。一見大変そうだが、実は国民にとってのダメージは最も小さい。

第二の手法は「借金踏み倒し」。デフォルトがそうだ。財政破綻とも言う。棄捐令や徳政令がそれに相当する。日本では鎌倉時代や徳川時代に時の権力者が何度も行い、世界でも頻繁に見られる。しかし、この手法はあまりに過激で、現代では国民や国際世論の反対が強すぎるだろう。

したがって国民にわかりにくく、反対しにくいハイパーインフレの形をとる可能性が高い。インフレとは実質的に債権者(お金を貸している人)から債務者(お金を借りている人)への実質的な富の移行である。その度合いが激しいものがハイパーインフレだ。

日本国の最大の借金王は国(中央政府)だ。そして、債権者は国民であるからして、ハイパーインフレは国民から国への富の移行ということになる。その意味でハイパーインフレとは大増税と同義だ。踏み倒しの一種と言える。

第三の手法は、他国財産の分捕りだ。過去、侵略戦争のいくつかはこれが理由で起きたが、今はこの選択肢の可能性はないだろう。その点だけは、幸福だと思う。