明治政府は西南戦争の軍事費用調達のために不換紙幣を刷りまくり、その結果、悪性インフレが起きた。その鎮静化のために明治15年、日本銀行を創設し、安易な紙幣増刷に歯止めをかけたのだ。税収という厄介な財源ではなく紙幣増刷という安易な方法で歳出を賄う仕組みを排除したのだ。

今の日銀は、軍事費調達ではないが、社会保障費やコロナ対策費の調達のために、中央銀行を政府から独立させた先人の知恵と反省を完全に忘れ去っている。

2013年の段階で、日本は財政破綻間近だったと思う。当時は日本社会にはそれなりの危機感があった。2010年3月7日づけの朝日新聞の1面トップに「悪夢『20XX年日本破綻』」(五郎丸健一記者)というタイトルの記事が載ったくらいなのだ。

ところが日銀は2013年、異次元緩和政策という実質財政ファイナン策を開始。危機の先送りを図った。必要ならいくらでも紙幣をするのだから財政破綻のリスクはなくなった。これにより社会に緊張感がなくなり財政再建の重要性は、ほぼ完全に忘れ去られてしまった。

得意の先送りはもう限界だ

日本社会が得意とする問題の先送りだ。自分が当事者の時に危機が来るのを嫌がり、とんでもないと思うことでも行ってしまうのだ。その結果、おできはさらに膨れ上がり破裂の衝撃はさらに大きくなった。それが今の状態だ。

目隠し
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※イラストはイメージです

国債の爆買いによって、日銀のバランスシートは対GDP比で世界ダントツの大きさになった。昨年8月末時点で、4~6月期の国内総生産(GDP)比でみた日銀の総資産は130%近くある。40%に満たない連邦準備制度理事会(FRB)など海外中銀より圧倒的に大きい。

もう平時のバランスシート規模に戻れない。保有国債を市中に売り戻せば市場は崩壊する。日銀の選択肢は満期時に国債を再購入せず、政府から償還元本を返済してもらうしかない。しかし政府は単年度巨額赤字だから、ほんの少しの償還さえできない。バランスシートを縮小できる可能性はゼロだ。

異次元緩和を開始したことで日銀は、物価のコントロールという日銀の主たる武器(=インフレへのブレーキ)を失ってしまった。紙幣が信用を維持するためには中央銀行が信用を維持し続けなければならないが、中央銀行としての機能を失った日銀が世界からの信用を維持し続けられるとは到底思えない。

そして前回記事でも指摘したように、ほんの少しの長期金利上昇で日銀は莫大な評価損を計上する。債務超過状態になれば、中央銀行の信用はほぼ完ぺきに失墜するだろう。「日銀は簿価会計を行っているから大丈夫だ」という日銀自身の反論は何の意味も持たないのだ。

インフレ懸念で世界中で金利上昇懸念が広がりつつある今、日銀はまさに薄氷の上に立っているようなものだ。