「怒鳴る・キレる禁止」をルール化したのらくら農場の荻原紀行さんは、かつては大声でブチ切れした経験があると言います。今はチーム経営を大切にする長尾彰さんも、怒りっぽいからという理由でかつて「赤鬼」というあだ名をもっていたそうです。2人が語る「怒らない」リーダーになる秘訣とは――。

東京の会社を辞め、長野県で農場を経営

今から二十数年前に東京の会社を辞め、埼玉の農場での住み込み研修を経て長野県八千穂村(現・佐久穂町)に移住した萩原紀行さん。妻とふたりで始めた「のらくら農場」は徐々に拡大し、今では約6.5haの土地を20名近くのメンバーが走り回り、有機栽培で50〜60種類の野菜を出荷しています。のらくら農場での経験を基に独立する仲間も多く、その家族も含めると40名近くが佐久地域へ移住するなど、地域を元気にする存在として期待されています。

のらくろ農場の萩原紀行さん(写真=本人提供)
のらくら農場の萩原紀行さん(写真=本人提供)

そんな萩原さんが『野菜も人も畑で育つ』(同文舘出版)という本を出版し、その内容に共感した長尾彰さん〔著書に『宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない。』『宇宙兄弟 今いる仲間でうまくいくチームの話』(共に学研プラス)〕との対談イベントが催されました。

畑と企業という異なるフィールドでありながら、チームによる経営という共通のテーマに挑んできたおふたりの対話の中から、リーダーが「怒らないこと」の大切さ、ピンチをチャンスに変える発想法についてのお話を紹介します。

「怒鳴る・キレる禁止」をルール化

『野菜も人も畑で育つ』には、高品質な野菜を持続的に作っていく独自の方法と合わせて、農業未経験者を農場に欠かせないメンバーに育てていくチーム作りの極意が書かれています。その具体的な方法のひとつとして紹介されているのが、「怒鳴る・キレる禁止」というルール。これにより、ミスを隠したり押し付け合うのではなく、問題を共有し合ってみんなで解決に当たれる職場に変わったのだそうです。

長尾 彰さん(写真=本人提供)
長尾 彰さん(写真=本人提供)

【萩原】本を出してみて嬉しかったのは、「うちも怒るのをやめました」って何人もの方に言われたことです。それから、「横に立つ」というコミュニケーション方法も実際にやってくださった方がいたりして。

【長尾】萩原さんが怒るとき、どんな怒り方でしたか?

【萩原】大学で山岳部の主将をしていたとき、合宿中に男女二人が見当たらなくなっちゃって。暴風雨だったから「行方不明か?」とすごく心配したんですよ。2時間くらいして帰ってきたんですけど、「お前、何やってんだ!」みたいな感じでブチ切れました。

【長尾】今の萩原さんだったら、なんて言います?

【萩原】そうだな……「心配したよ」とまず言いますね。それから「どうした?」と話を聞きます。いきなり切れる前に、事情を聞いた方が良かったですよね。そのときは特に事情はなかったんですけど(笑)。何回かそういう怒り方をしたことがあって、今でも胸が痛いです。