世界中で雇用のあり方が激変しつつある。世界各国で働いてきた著述家の谷本真由美氏は「非正規雇用が増えているのは日本だけではない。OECD加盟国では、1990年代半ばから2000年代後半にかけて非正規雇用の割合が11%から16%に増加している。多くの人がサラリーマンとして働ける時代は終わりつつある」という——。
※本稿は、谷本真由美『日本人が知らない世界標準の働き方』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
「会社」とは、リスクを回避するための「仕組み」でしかない
現在一般的になっている株式会社というのは、そもそもイギリスで大航海時代に、貿易のリスクを回避するためにできた仕組みでした。
当時の船は木製で、航海技術も未発達だったので、航海中に船が沈没したり、海賊に襲われることが少なくありませんでした。レトルトパウチの保存食も、缶詰すらない時代で、水夫は腐った水と、蛆虫の湧いたカンパンをかじりながら航海するという、大変ギャンブル性の高いものでした。
沈んでしまう可能性の高い船一隻に出資するのは大変なので、出資者は、複数の人と集まって、航海の費用を出し合うようになります。複数が集まれば、より多くの資金が集まるので、船を補強することも可能ですし、水夫の壊血病を防ぐために果物を積み込むことが可能になります。
また、船が沈んだ際のダメージも小さくなります。つまり、会社というのは、そもそも自分一人の力や資力では達成することが不可能な仕事を可能にしたり、リスクを回避したりするための「仕組み」だったのです。