既婚女性だけは7割の人が500万円のほうを選ぶ

【荒川】では、なぜ500万円を選ぶかというと、「500万円にしておいたほうがいいんじゃないかな?」という考え方に基づいています。でも、見ず知らずの相手ですよ。普通は1000万円を選ぶんです。

【中野】普通は1000万円ですよね?

【荒川】でも、既婚女性だけは7割の人が500万円のほうを選ぶんですよ。ところが、相手が自分の知っている人になると、既婚男女もソロ男女も9割から10割が500万円を選びます。

【中野】ああ、なるほど。知っている人ならね。嫌なやつだと思われたくないですから。

【荒川】そう。見ず知らずの人なら、どう思われても関係ないですよね。だから、1000万円を総取りするほうが合理的なんです。

【中野】うーん。論理的に考えれば、1000万円を選びますよね……。ステレオタイプではひとくくりにはできない

「感情で動くタイプ」と自称する人が「理屈で動くタイプ」のことも

【荒川】なぜこんな話をしたのかというと、1000万円総取りを選ぶ人は、理屈で動いている人なんですよ。

「私は感情で動くタイプです」と常々言っているのに、本当は1000万円を選ぶのなら、日常生活の判断基準として理屈・ロジックを重視しているということじゃないですか。こんなふうにステレオタイプから外れていることはかなり多いんです。

荒川和久・中野信子『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
荒川和久・中野信子『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

この思考実験は、言っていることとやっていることが違う、と明らかにするのに面白いなと思っています。

このようなステレオタイプは非常に安易ですから、男と女は違うよね、という単純な話にはしたくないと思っているんです。一人の人間の中にいろいろな面がある。一人の人間の中に男性性も女性性もあるし、父性もあるし母性も存在する。

【中野】ライフステージによっても変わりますしね。

【荒川】あと、上司に相対するときの自分と、部下と相対するときの自分と、好きな人に相対するときの自分とは、全然違うじゃないですか。

【中野】そうですね。それに関して言えば、使う言語によってペルソナ(外的側面、周囲の人に見せる自分)が変わる、という興味深い研究があります。日本語を話しているときは謙虚な人も、英語を話しているときはすごく熱いネゴシエーターになったりする。

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