2月初旬、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(当時)が、JOC臨時評議員会で女性蔑視ともとれる持論を展開。その後撤回したものの、記者会見での態度がまたも波紋を呼び、辞任に追い込まれました。男性学を研究する田中俊之先生が「それでも黙らせてしまってはいけいない」と語る理由とは──。
何が悪かったのかわかっていない
「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」「時間も規制しないとなかなか終わらないので困る」「組織委員会にも女性はいるが、みんなわきまえておられる」──。森氏のJOC臨時評議員会での発言が、連日大きく報道されています。
その後に記者会見を開いて謝罪したものの、決して本心から言っているようには見えず、記者の突っ込んだ質問にもいらだった様子を隠せませんでした。「何が悪かったのかわかっていない」という印象を受けた人も多かったのではないでしょうか。
森氏は、どんな世界を生きているのかという興味
森氏の発言は、現代のジェンダー観からはかけ離れたものであり、公の場で言えば女性蔑視と受け取られるだろうことは想像がつきそうなものです。なのに、なぜナチュラルに口に出してしまったのか、そもそもこうした女性蔑視的な論理や感覚はどう培われたのか、男性学の研究者としては興味がつきません。
発言の論理自体は、本当にひどいものです。まず、話が長いという個々人の性質によるものを「女性は」とひとくくりにした点。さらに、「ラグビー協会は今までの倍時間がかかる。女性がなんと10人くらいいるのか今……5人か、10人に見えた」と発言し、まだまだ女性理事が少ない日本ラグビー協会について、5人でさえ多いと感じていたのではないかという点。これは、森氏の世界では、女性理事の存在自体が違和感あるものとして捉えられているからでしょう。