少子化は女性の社会進出が進んだせい、女性管理職が増えないのは本人がなりたがらないからだろう……。こうした意見がいまだに根強いのはなぜなのでしょうか。その背景を、男性学の第一人者、田中俊之先生がわかりやすく解説。現状を変えていくための解決策も提示します――。
2019年の出生率は1.36に
日本では少子化が深刻な問題になっています。原因についてもさまざまな議論が行われていますが、その中には社会学の観点から見て正しくないと思われるものもあります。その代表例が「少子化の進行は女性の社会進出が進んだせいだ」というものでしょう。
こう考える人の根拠は、1971〜1974年の第2次ベビーブームにあります。当時は出産したら専業主婦になる女性が圧倒的に多く、社会進出し続ける、つまり働き続ける女性は少数派でした。
その後、出生率は少しずつ下がり続け、1989年には過去最低の1.57を記録。これは「1.57ショック」と呼ばれて世間に衝撃を与えましたが、その後も低下は止まらず、2005年に1.26にまで下がり、その後やや上昇しましたが2019年は1.36となりました。
他の先進国では、フルタイム共働きが増えても出生率を維持
こうした変化は、時期的には女性の社会進出やパートの増加、フルタイム共働きの増加などと重なっているため、一見しただけでは「ベビーブーム時代に比べて働く女性が増えたせい」と思ってしまいがちです。
しかし、2019年の1.36という数字は、結婚する人が減った結果でもあります。男女問わず結婚する人が減れば出産も減りますから、女性のフルタイム勤務だけに原因を求めるのは正しい考え方とは言えません。
また、他の先進国では、フルタイム共働きが増えても出生率はおおむね維持されています。一方、日本では待機児童の問題もあり、女性が「育児か仕事か」と二択を迫られるケースも少なくありません。働く女性が増えたのは海外も日本も同じなのに、なぜ日本だけここまで出生率が下がっているのでしょうか。