日本と世界の当たり前にはズレがある。イギリス在住で著述家の谷本真由美氏は「欧州の人たちは、新型コロナ対応で率先してマスクを着用した日本人を奇異にみている」という――。

※本稿は、谷本真由美『世界のニュースを日本人は何も知らない2 未曽有の危機の大狂乱』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。

COVID-19
写真=iStock.com/Peter Fleming
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日本の良さを伝えないメディアの不思議

日本では2020年の初頭から新型コロナウイルスが話題になっていましたが、欧州(イギリス)に住んでいる私が大変驚いたことは、日本のメディアの多くは日本政府や医療機関の対応に文句ばかり言っていたということです。

日本のワイドショーや報道番組では、連日出演者が日本政府の不手際や手ぬるい対策を指摘し、カンカンに怒っている様子を流していました。番組に出演する感染症の専門家や医療関係者も、政府の対応がいかにひどいかという発言をしていました。

同時に、彼らの多くが繰り返していたのは、海外の対策がいかに素晴らしいかということです。この様子に、「ちょっとおかしいんじゃないか」と思った人もいるでしょう。

当然です。2020年8月30日の時点で、アメリカでは死者がなんと18万人を超えていましたし、イギリスでは公式統計に加えていない死者も加えれば6万人を超えていたといわれています。フランスやイタリアも3万人を超えています。

ところが日本の死者数はまったく違います。同じ時期の累計を見れば、なんとわずか1300人ほど。イギリスの研究者は、誤差や統計エラーを加えたとしても日本の死者数はアメリカやイギリスのそれには及ばないと述べています。

なぜこんなことが起きたのか?

「もともと持っている抗体が違う」「BCG予防接種に効果があった」などさまざまな説がありますが、各国政府の対策の違いや一般の人々の行動も、死者数に大きな影響を及ぼしたことは明らかでしょう。私は感染症の専門家ではありませんが、海外で実際に行われている対策や人々の行動をみていると、素人でもわかります。

日本と同じく死者が少ない韓国や台湾、タイなどには日本と似ているところがありますが、死者数が膨大な国は一様に対策が遅く支離滅裂で、人々の自分勝手な行動もひどいものです。ところが、なぜかそういった事実は日本ではほとんど報道されません。