戦争を生き抜いた、東山動物園のゾウ

また東山動物園の北王英一園長も、動物を殺さないよう最後まで粘っていたが、1944年12月13日の名古屋空襲のさい、内務省の命令を受けた警官と猟友会のメンバーにライオンたちの殺処分を迫られ、とうとう許してしまう。さらにクマがこれに続いた。だが秋山正美の『動物園の昭和史』によると、このあと北王の態度はがらりとかわった。残っていたゾウ「エルド」と「マカニー」の殺害を迫られても、頑として首をタテにふらなかったのである。そして、動物園に駐屯していた陸軍がゾウ舎に積みあげていたマイロ(キビの一種)を盗み、ゾウを養った。マイロをわざわざ盗めるようなかたちで置いたのは、三井高孟たかおさ獣医大尉のはからいという。このおかげで、ゾウたちは戦争を生きぬくことができた(Itoh 2010,秋山 1995、京都市 1984、神戸市立王子動物園 2001、大阪市天王寺動物園 1985)。

オリの中に向けて銃をかまえる男たち
出所=『動物園・その歴史と冒険』
図版3:東山動物園で殺処分の訓練をする猟友会メンバー。同園もライオンなどの殺処分はまぬがれなかった(秋山、1995年、246ページ)

【参考文献】
大阪市天王寺動物園編『大阪市天王寺動物園70年史』大阪書籍、1985年。
秋山正美『動物園の昭和史 おじさん、なぜライオンを殺したの 戦火に葬られた動物たち』データハウス、1995年。
Itoh, Mayumi. Japanese Wartime Zoo Policy: The Silent Victims of World War II.New York: Palgrave Macmillan, 2010.
Lutz, Dick and J. Marie Lutz. Komodo: The Living Dragon. Salem: Dimi Press,1991.
恩賜上野動物園編『上野動物園百年史』第一法規出版、1982年。
京都市、京都市動物園編『京都市動物園80年のあゆみ』上林紙業、1984年。
神戸市立王子動物園編『諏訪子と歩んだ50年―王子動物園開園50周年記念誌』森山印刷、2001年、同資料編、文尚堂、2001年。

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