3メガ損保も「脱石炭火力」で足並みを揃えた

しかし、環境負荷の重い石炭火力発電所に対する逆風は「外圧」ばかりでなく、今や国内からも吹き込む。2020年9月、損害保険大手は相次いで「脱石炭火力」を宣言したのもその流れだ。

SOMPOホールディングス(HD)傘下の損害保険ジャパンが先陣を切って9月23日、石炭火力発電所の新規建設に対する保険引受・投融資を原則停止すると発表した。

東京海上日動火災保険の持ち株会社の東京海上HD、三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険を傘下に持つMS&ADインシュランスグループHDもこれに追随し、3メガ損保は「脱石炭火力」で足並みを揃えた。

通常、発電所建設に向けた事業融資(プロジェクトファイナンス)は保険への加入が前提となるため、損保会社の引き受けがなければ事業に大きな影響が及ぶのは避けられない。

「脱石炭火力」への日本の金融機関の取り組みとしてはすでに3メガバンク、生命保険大手がともに新規建設への融資や投融資の原則停止を決めている。3メガ損保の場合、3メガバンクや生保大手に比べて「脱石炭火力」への対応が明確でなかったのは、取引先への配慮を優先したためとみられる。

「脱石炭火力発電」に向けて形成された金融面での包囲網

しかし、昨年6月に国連傘下の国連環境計画(UNEP)と世界各国の金融機関で構成するUNEP金融イニシアチブが損保業界向けのESGリスクへの取り組みの手引書をまとめ、「脱石炭火力」の方向に3メガ損保の背中を押した。

メガ損保がメガバンク、生保大手の歩調に合わせたことで、日本でも石炭火力発電事業に対する金融面での包囲網が形成された格好だ。しかし、これも原則は新規の案件に限定され、すでに投融資や引き受けを表明している事業は除かれる。さらに高い発電効率を備えた施設は例外という“逃げ道”もある。

現に、政府系金融機関の国際協力銀行(JBIC)は2020年12月29日、前述した三菱商事が参画するベトナムの「ブンアン2」に対し、約17億6700万ドル(約1800億円)の協調融資を決めたと発表した。

JBICは約6億3600万ドルを限度に融資し、3メガバンクや韓国輸出入銀行などが加わる。日越の国家間プロジェクトだけに「脱石炭火力」を宣言した3メガバンクも容易に反故にできない事情を反映している。それだけに、今後も例外案件が出る可能性はあり得る。その場合は明確な説明責任が求められる。