バフェット氏も「脱炭素」の行動に目を凝らしている
総合商社大手5社が海外での石炭火力発電事業の抜本見直しを迫られている。
「パリ協定」による「脱炭素」の流れが企業行動にも求められている中、「環境」「社会」「企業統治」を重視するESG投資に大きく傾く世界の有力な機関投資家や、金融機関による容赦ない重圧が加わる。
この企業環境の流れは、事業の縮小・撤退が避けられない次元を迎えた。昨年夏に突如、大手5社の株式取得に動いた「投資の神様」ウォーレン・バフェット氏もその行動に目を凝らす。
三井物産は早ければ2021年中にも海外石炭火力発電事業からの撤退を始める方針を決めた。読売新聞が1月1日付朝刊で、三井物産の安永竜夫社長へのインタビューをベースに報じた。
三井物産は中国、インドネシア、マレーシア、モロッコで現地資本などとの共同出資で石炭火力発電事業に参画している。世界的な「脱炭素」の流れを踏まえ、2020年10月に2030年までの10年間で出資分の売却を終える方針を示していた。
今回の決定はこの大幅な前倒しを意味する。
三井物産は非資源ビジネスの強化に注力するも道半ば
三井物産は市況に左右されがちな資源ビジネス(金属・エネルギー部門)に偏重した収益基盤からの脱却を目指し、「安永体制」で非資源ビジネスの強化に注力してきた。その点でも海外火力発電事業の段階的縮小は必然の流れだ。しかし、収益基盤のポートフォリオ転換は思うように進まず、資源ビジネス偏重からの脱却は引き続き経営課題として残ったままだ。
そのカギを握るのは2020年12月23日に発表したトップ人事で、安永社長は4月1日付で6年間務めてきた社長の座を堀健一専務執行役員に譲り、代表権を持つ会長に退く。安永社長は「収益基盤の組み換えに注力してきたが、まだ道半ば」と無念さをにじませ、堀氏に長年の経営課題解消を託す。
それは堀氏にとって「脱石炭火力」が早急に取り組まなければならない命題になる。