健康診断や人間ドックを受けないことのリスク
そして次にコロナの流行によって、がんや脳卒中など緊急性を要する患者さんの受診控えが世界的に問題になった。20年は健康診断やがん検診の受診者も大幅に減る見込みで、21年以降、病の早期発見を逃した患者が増えるのではないか、と個人的には心配している。特に「働く現役世代」が健康診断や人間ドックを受けなかったことで、病が進行した状態で発見されれば、社会的にも損失になる。
東丸医師も「生活習慣病があっても、軽症や無症状であると、放置しているケースが多い。やはり一般の方に予防医学を訴えていく必要がありますね。生活習慣病があると感染症の重症化リスクも高まります。また自粛生活によって運動不足が問題になりました」と話す。
21年は自粛による健診控え→病の進行、または運動不足→肥満→糖尿病に注意が必要だろう。
コロナ禍でアルコール依存に拍車がかかるケースも
また、オンライン技術が普及し、AI診断やAIによるデータ解析が進んでいくと考えられる。それにともなって薄れていくのは“人とのつながり”だ。
「21年のおせちは、大人数よりも個別の1人用が人気のようです」と管理栄養士の望月理恵子氏が説明する。
「接待や宴会が減り、レストランもロボットが運ぶなどの技術が進み、人との会話が減っていくでしょう。また、コロナ禍で自宅でのアルコール摂取量が増える方もいます。これまでも高齢者のアルコール依存が問題視されてきましたが、自粛生活中に単身の高齢者が社会的に孤立し、酒で寂しさをやわらげようとして飲酒量が増え、依存に拍車がかかっているとのことです」
自殺者数も20年7月から急増している。実は私自身も20年4月頃は対面取材が激減したことで気持ちが鬱々としてしまったため、「人と会う大切さ」を実感している。
どんな物事でもそうだが、医療と健康においても正と負の面がある。たとえば健康診断を受診することで「必要のない医療介入をすることになる」「早期から薬づけになる」という指摘がされる一方で、早期に病気を発見し、治療を終えられる1人になれば、それは自分の人生に大いなるプラスだ。
人と会うこともコロナが重症化するリスクがあるなら用心しなければいけないが、必要以上に控えることは生活の質を落としてしまう。メディアの情報を材料に、“あなた”が冷静に判断し、自分に必要なリスク管理をしてほしい。