先日、非常にエキサイティングな経験をした。ベルリンで3日間行われたOBサミットの準備のための高度専門家会議に参加する機会をえたのだ。

このOBサミットとは、かつてサミットに参加した世界各国の首脳経験者による国際会議で、サミットを支えるプレミーティングのような形で20数年続いてきたものだ。OBサミット自体は、今年は5月9日から3日間、サウジアラビアのジッダ近郊の町で開催され、日本の福田康夫前首相やドイツのシュミット元首相などが参加した。

私が参加した会は準備会合のようなものでありながら、シュミット元首相自身も参加するなど首脳OBはこの会議を大切にしていた。世界中から集めた専門家の意見を十分に聞き入れたうえで本番のサミットに参加していることがよくわかった。

今の時代をどうとらえるか、世界をどう変えてゆくべきか、ということについて3日間集中した議論が交わされ、大いに刺激を受けた。語り出せばきりがないが、現在の国際情勢の中で一つだけ言っておきたいことがある。

ベルリンの壁が崩れ落ちてから今年でちょうど20年が経過した。この20年間で最初に持ち上がった世界観がアメリカ一極支配、ドル一極支配である。唯一の超大国となったアメリカを基軸にした世界秩序が21世紀をリードしてゆくだろうという考え方が支配的になり、アメリカ流の資本主義の世界化がグローバリゼーションと呼び変えられた。

ところが21世紀に入って9.11テロが起きる。アメリカは「テロとの戦い」「イラク民主化」を叫んで報復への道を突き進んだが、その結果もたらされたのはテロの世界中への拡散と、アメリカ流民主主義の押し付けの結末としての中東情勢の液状化だった。もう一つの金看板だったアメリカ流の資本主義も惨めに色あせてしまった。そして行き着いた先はサブプライム問題に端を発した金融危機であり、この1年に世界が直面した状況に一気に暗転する。