世界各国からアメリカへの敬意や支持は、かつてないほど薄れている。世界はアメリカ一極支配どころか、いわば多極化し、私が言うところの「全員参加型」の秩序に向かっている。もはや先進国だけのG8では持ちこたえられない。4月にロンドンでG20が開催されたあたりから、世界は多極化、多次元化し、全員参加型に向かっているという認識が、ジワリと広がっているように感じる。
G8からG20へ向かっているという流れの認識は間違いではない。しかし、私がベルリンの議論で強く印象付けられたのはG20ではなくG2、つまりアメリカと中国が実質的には世界秩序の中核を形成しつつあるということだ。
IMF増資に参加してくる中国、米国債を持ってくれる中国に対してアメリカは相当な配慮を見せている。北朝鮮のミサイル発射問題で日本は迎撃態勢まで整えて、「打ったら国連制裁」と興奮していたが、フタを開けてみたらどうだったか。「日米連携の国連制裁決議」はどこへやら、「米中連携の議長声明」という流れを、見せつけられただけだった。
日本人はそろそろまともな考え方をしなければいけない。アメリカが、中国との連携によって新しい世界秩序の流れをつくり出そうとしていることに気付くべきなのだ。これは、日本が排除されているという妙な被害者意識や劣等感で言っているのではない。日米が連携して中国を封じ込めるなど、空想ゲームのような中国脅威論をいつまでも唱えていたら、日本にとってとんでもないことになる。
2007年に中国のGDPは、ドイツを抜いて世界3位になった。12年に日本を追い抜くと我々は予測していたが、来年にもそのときがやってくるのは間違いない情勢だ。
その中国とアメリカが接近してゆく流れの中で、日本という国の存在をいかにして高め、そして世界秩序の形成の中で日本の役割を訴求し、世界からの期待感を醸成してゆくか。そこに大きく踏み込まなければいけないというのがベルリン会議で得た大きな教訓だった。
かつて山本五十六や石田禮助がそうだったように、日本人としてある種の覚悟を持ち、正しい時代認識と情勢判断をする。そのうえでいかに自分たちのポテンシャルを最大限に発揮するか、大きな構想力で向き合うべき時代がやってきたのである。