今は世界動向を理解することが非常に難しい時代である。現状をやさしく教える解説本は多いが、俯瞰的な視座をもって分析・解説した本は少ない。

世界動向を語った本の中でよく見られるのが、BRICsだのネクストイレブンだのと、次の「成長地域」探しをテーマとしたもの。しかし現実の世界はそんな平面的なものではなく、グローバル化がもたらした相互依存ネットワークによって立体的に成り立っている。拙著『世界を知る力』ではネットワーク型の視点で世界を見ることを提唱している。

相互依存ネットワークの深まりにより何が起こったか。小国の財政破綻が世界中に影響を及ぼすようになり、遠い国の経済問題にも世界が過敏に反応するようになった。これを「相互依存の過敏性」と呼んでいるが、世界が過敏に反応するのは恐慌を恐れるためである。その背景を知るためには『カジノ資本主義』と『バブルの物語』がいい。前者はウォールストリート主導型のカジノ資本主義が世界を蝕む「資本主義の病理」に警鐘を鳴らし、後者はバブルの原点を思い知らせてくれる名著である。

エネルギーをめぐる世界の歴史を体系的に描いた『探求』も強く勧めたい。数多の解説書を読むよりはるかに世界動向への認識が深まる。

■視野の狭い報道に踊らされない

『世界を知る力』
    寺島実郎/PHP研究所

日本の情報空間は、驚くほど視野の狭い報道で埋め尽くされている。そうした状況下では、自ら情報を結びつけて整理し「ネットワーク型」の視点で世界潮流を捉える“全体知”が重要だ。自分の視座の磨き方のヒントも得られる1冊。続編の『世界を知る力 日本創生編』では、大震災後の日本が再起動するための復興構想を提示している。