企業活動の目的は、顧客に対して製品やサービスを提供すること。その際に大切なのが生産性の向上で、限られた経営資源のなかでどれだけの付加価値を生み出せるかにかかっている。その力の源泉は何かというとマンパワーであり、社員1人ひとりが利益貢献できる風土づくりが求められる。

組織における“人”の重要性は、ドラッカーが『現代の経営』で「集めた人材をどのように配置し、教育し、貢献させるか」と説いているとおり。その内容は色褪せることがない。企業活動と人とをつなぐ人事・労務の基本的なことを学ぶ意味でも、ぜひ手に取りたい書である。

人が働くのは、仕事で何かを成し遂げたいという思い、つまり自己実現の欲求があるから。その対価が給与であるがゆえ、「賃金哲学」をどう設計し、運用していくかということは、マネジメントにおいて非常に大きなウエートを占めることになる。

人事上の処遇をモチベーションアップにつなげるには、成果と日々の行動を評価することが重要だ。ここでいう行動とは、会社のミッションやCSR(企業の社会的責任)の考え方を理解し、共感して、業務プロセスに反映させているかということ。それができると、社会的存在としての企業の存在意義はぐんと高まる。

■「人の重要性」を説くバイブル

『現代の経営 上・下』
    P・F・ドラッカー/ダイヤモンド社

「顧客を創造すること」が企業経営の目的であることを世に知らしめた書で、マネジメントに関する“不易と流行”のエッセンスを語って尽きることがない。たとえば不易について、企業が意思決定し、行動していくうえでのマネジメントの役割について、(1)事業マネジメント、(2)経営管理者のマネジメント、(3)人と仕事のマネジメント──の3つに分け、顧客が望むものを商品やサービスとして提供するには、それぞれをどう高めていくかがポイントになると説く。現代のマネジャーにも必読の書だ。