ベンチャー企業と大企業では、人事についての考え方が異なる。私がいたリクルートでは、結果を出せば出世するというシンプルな構図があった。しかし大企業では、人間関係などの要素が複雑に絡んでくる。大手の人事部にいた著者が内幕を明かした『人事部は見ている。』を読むと、大企業に共通する評価基準がよくわかる。

『人事部は見ている。』楠木 新/日経プレミアシリーズ
人事評価や異動は、実務ベースでどのように決まるのか。一般社員からは見えにくい人事のメカニズムや人事部の仕事を、大手企業で人事に携わった著者が書き尽くす。

日本企業では日本人独特のメンタリティによって組織運営されることも多い。日本人の特質を解き明かした『タテ社会の人間関係』『「空気」の研究』は、企業内の不思議な力学を理解するうえで参考になるはずだ。

『タテ社会の人間関係』中根千枝/講談社現代新書
個人主義・契約精神が根づいた欧米と違い、タテ関係が支配する日本社会。 「場」を強調し、「ウチ」「ソト」を強く意識する日本的社会構造の本質に迫る昭和40年代のベストセラー。

『「空気」の研究』山本七平/文春文庫
理性的に考えれば間違っているのに、なぜ反対の声をあげづらいのか。日本人を呪縛する「空気」という超論理的存在の発生から支配に至るメカニズムを解明する名著。

もっとも、どのような組織であっても出世する人の本質は変わらない。19世紀の名著『自助論』と、近年のベストセラー『夢をかなえるゾウ』で説かれる成功法則は、表現が異なるだけで中身はほとんど同じだ。

『自助論』サミュエル・スマイルズ/三笠書房
明治の大ベストセラー『西国立志編』の現代語訳版。さまざまな分野で活躍した300人以上の人のエピソードを紹介しながら、「自助」の精神の重要性を訴える。

『夢をかなえるゾウ』水野敬也/飛鳥新社
ダメサラリーマンの前に突如現れた、ゾウの姿をした関西弁の神様。神様の説く成功法則は、地味なものばかりだった──。普遍的な成功法則を、小説形式でユニークに紹介。