自分はリーダーにふさわしくない、と悩む人は多い。そういう人はたいてい、「リーダーはあらゆる点で皆より優れていなければいけない」と思い込んでいる。だがそれは大きな誤解だ。

リーダーシップとは、組織目標達成にむけて人々の衆知を結集し、ベストを尽くすよう働きかけ、PDCAサイクル(※Plan(計画)、Do(実施)、Check(監視)、Act(改善)を順に繰り返し、品質の維持・向上や継続的な業務改善を推進する手法)を回すことである。そのためのコミュニケーション能力と専門能力を磨く必要があるが、学習次第で誰でもリーダーシップは習得可能だ。リーダーシップに関する本を読むことは、それを身につけるうえで大いに助けになる。

だが本を鵜呑みにしてはならない。大事なのは自分で考えることだ。課題に関して仮説(解、方法等)を立て、それから本を読む。自分と著者の考えを比較し、自らの考えの正しさ、不足を確認したり、また、新たな発見、学びが得られる。有名な学説の欠点が見つかることもある。論語にも「学びて思わざれば則すなわち罔くらし(無知)」とある。本は著者と対話するつもりで読むことで、初めて自分の血肉となる。

『企業成長の哲学』F・R・カッペル/ダイヤモンド社
1960年代、名経営者として知られたATT社長による講義録。「当面の利益確保も必要だが、最も大切なのは将来の成長力を築くこと」という主張は今も色褪せない。

『私の行き方 考え方』松下幸之助/PHP文庫
「経営の神様」の半生記。「事業の使命は楽土の建設」にあるなど高い経営理念と事業発展の知恵が学べる。信念と工夫の人であったことを示す逸話も面白い。

『人を動かす』デール・カーネギー/創元社
人間を動かすのはカネでも権力でもなく、「ほめること」。相手を認め自尊心を満たすことで起きる奇跡を実例とともに証明。1937年の刊行以来、世界中で読まれている名著。

『58の物語で学ぶリーダーの教科書』川村真二/日本経済新聞出版社
リーダーシップ発揮のステップを段階ごとに順を追って解説。困難を乗り越えた人々のストーリーに自分を重ね合わせることで、リーダーとしての自信がわいてくる。

『V字回復の経営』三枝 匡/日経ビジネス人文庫
実在する大企業が傾いた経営を立て直すまでの戦いを描く。危機感の欠如、責任のなすり合いなど、どの会社にもありそうな病状を鋭く指摘すると同時に、解決策も示す。

『伸びる男はどこが違うか』邑井 操/新潮文庫
若き日の松下幸之助や本田宗一郎などのエピソードを交えつつ、「伸びる人間」に特有の「己を生かし、人を生かす」考え方、方法を紹介。会社勤めをする人の心を支える一冊。

『「生涯改革者」上杉鷹山の教え』佃 律志/日本経済新聞出版社
財政難に苦しむ米沢藩を立て直した名君・上杉鷹山の実績を、現代のビジネスに置き換えつつ分析。「上杉鷹山ならこんなときどうするか」は道に迷ったときの指針となる。

『金ではなく鉄として』中坊公平/岩波書店
「森永ヒ素ミルク事件」などで知られる弁護士の自叙伝。市井の片隅に生きる人々が逆境においてどれほど高貴な行動をとったのか、人の上に立つ人なら知っておくべき。

『成功哲学』ナポレオン・ヒル(田中 忍訳版)/産業能率大学出版部
成功の第一条件は、強運でも卓越した能力でもなく、必ずうまくいくという信念を潜在意識にすりこむこと。ともすれば悲観的になりそうな心を辛抱強く励ましてくれる。

『マネジメント思想の発展系譜』上野一郎/日本能率協会
「怠け者の労働者をやる気にするには?」。この人類共通の悩みに科学的管理手法を持ち込んだパイオニアたちの試行錯誤の記録。マネジメントが基礎から系統立てて学べる。

リーダー・ビジネス研究所代表 川村真二
1948年生まれ。青山学院大学卒。経営・教育コンサルタント。日本能率協会マネジメントセンター等講師。マネジメント、問題解決、リーダーシップ、部下育成などの研修や講演、また、「企業遺伝子」の研究に取り組む。
(構成=長山清子 撮影=澁谷高晴)
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