昔はどこの会社にも、鬼のような上司がいた。上司は部下を厳しく育てた。部下たちは、猛烈社員となって会社の発展に寄与し、日本は奇跡の復興を遂げた。高度成長後、40数年の歳月が流れ、いつの間にか会社から鬼の姿が消えていった……。
会社には、許してはならないことがある。部下が嫌がっても、押し通さなければならないことがある。あなたは部下の不平に対してハッキリと正論を言い、反会社の言動は否定し、言うことを聞かない部下は叱る。それでも反抗する部下には罰を与える。上司はやさしいだけでは務まらない。鋼のごとき強い心の持ち主でなければ務まらない。
戦後の民主教育を受けてきた人たちは、私の意見にかなりの違和感をおぼえるようだ。それは十分、承知している。だが私は、戦後の民主教育によって国や政治、会社など、組織という組織が非合理で弱くなってきたと感じている。
この本も、多少なりとも私への反感を抱きつつ読んでいただいていることだろう。
だが、私はこの本を、多くの会社の社長たちの気持ちを代弁するつもりで書いている。実際に50代、60代の会社経営者の方々は、私の意見に共感してくれる人が多い。
ところが悲しいことに、私の意見に共感してくれていても、後継者となるべき自分の子供には、つい戦後民主主義的態度をとってしまう創業社長が少なくない。部下には厳しく接することができても、いざ自分の息子となると甘い顔をしてしまう。
有名大学を出て、どこかで勤め人の経験を数年させ、自社に戻して後継者にする。そんな男は新卒で入った会社でも、「どうせ家業を継ぐから」と必死で勤めるわけではない。学校や友人やマスコミの影響を受けた極めて民主的な考え方を持ったまま親のつくった会社に入社して、「親父の考え方は古い!」と言い放つ。命令すれば、いちいち反抗する。肩書が付けば付いたで、いままで父親が築いてきたシステムを土台から変えようとする。