「高齢者が生き延びるために若者を働かせない社会」だ

国によって異なるが、テレワークが可能なのは就業者全体の20%から40%だろう。裕福な国ほど、この割合は高くなる。よって、テレワーク就業率の最も高い国がアメリカなのは驚きではない。

ジャック・アタリ著、林昌宏・坪子理美訳『命の経済 パンデミック後、新しい世界が始まる』(プレジデント社)
ジャック・アタリ著、林昌宏・坪子理美訳『命の経済 パンデミック後、新しい世界が始まる』(プレジデント社)

当然ながら、テレワーク就業の可否は社会階層と強い相関関係にある。

テレワークの推進は、一部の企業に大きな成功をもたらした。たとえば、ウェブ会議サービスを提供するカリフォルニアの企業、Zoomビデオコミュニケーションズ社だ。2019年12月から2020年4月にかけて、この会社が提供するサービスの利用者は30倍に急増した。

フランスでは都市封鎖の期間中、就業者の25%は職場へほぼ毎日出勤し、4%はテレワークと出勤を併用し、20%はテレワークで終日働き、45%は就業を完全に停止した。就業を停止した者は、部分的失業制度〔休業期間中、従業員は賃金の一定割合を受給できる〕によって一時的に保護されるが、この制度を実際に利用できたのは就業者の6%だった。本書の執筆時、テレワークに従事している人々の41%はイル=ド=フランス地域圏〔パリを中心とする地域圏〕に暮らし、ノルマンディー地域圏〔フランス北西部〕にいるのはわずか11%だ。

ようするに、このような対応は、密集経済を停止させ、孤立経済を生み出す。これは多くの者が自発的に独房で暮らすような社会であり、引退した高齢者が生き延びるために若者を働かせないようにする社会だ。

孤独に埋没して衰退するこうした社会が、経済、文化、政治、エコロジーに、現在そして将来にわたっておよぼす影響は計り知れない。

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