中国のGDPは6.8%減になっていた

第一に、2020年1月初旬どころか2月過ぎになっても、多くの先進国の政治指導者たちは大型パンデミックの存在を信じようとしなかった。これは季節性インフルエンザのようなものに過ぎないと軽視した彼らは、対策のために経済活動を減速させることなど考えてもいなかった。

すべては1月末、中国で始まった。武漢市(人口1100万人)と黄岡市(人口750万人)では、自動車の製造会社とその下請け企業、半導体の工場、化学工業や金属精錬工業の企業は、春節の休暇を終えて操業を再開するはずだったが、なぜか閉鎖されたままだった。武漢市と黄岡市だけでなく多くの都市で、一言の説明もなく春節の休暇が延長された。

世界のノートパソコンの4分の1を生産する重慶市では、休暇が2月9日まで延長された。浙江省、江蘇省、広東省〔ともに太平洋湾岸の工業地域〕でも、すべての工場の操業が2月9日まで停止された。しかし、「必要不可欠」と見なされる生産活動と、一部の戦略的企業の操業は維持された。

たとえば、広東省のほとんどの工場は閉鎖された一方で、ファーウェイ(華為技術)社の広東省東莞市にある工場群は操業し続けた。2月、失業率は過去最悪の6.2%にまで上昇したが、心配する者は誰もいなかった。3月、中国の工場は操業を再開した。2月末、中国の第1四半期のGDPは前年同時期比6.8%減になっていたが、誰もそのことに注意を払っていなかった。

人けが絶えた中国湖北省武漢市の駅に立つ旅行者(中国・武漢)=2020年1月23日
写真=AFP/時事通信フォト
人けが絶えた中国湖北省武漢市の駅に立つ旅行者(中国・武漢)=2020年1月23日

「中国の地域的な問題」と捉えられていた

世界各地で、人々はこれらのことをとるに足らない地域的な問題だと捉え、中国はこれらの問題をあっという間に解決するはずだから、世界経済の見通しには何の変化もないだろうと考えていた。

しかしながら、西側諸国の一部の識者は、中国の一部の地域がたとえ一時的にせよ、工業生産を停止したことは、それ自体、経済的にきわめて深刻な事態だと受け止めた。というのは、(生産停止による)供給と(中国人の所得減による)需要が同時に危機に陥ったからだ。

彼らの心配に耳を傾ける者はほとんど誰もいなかった。当時の私の発言も聞き流された。彼らは次のように付言した。「パンデミックはおそらく非常に深刻であり、中国がこれを早期に抑え込むことはできないだろう。韓国と台湾がこのパンデミックにいかに備えているかに目を向けるべきだ」。