多くの国が「隔離戦略」を採った

パンデミックにはるかにうまく対応した韓国、台湾、ベトナムなどの国・地域では、工場は閉鎖されず、生産活動はあまり鈍化しなかった。鈍化したとすれば、外需が減り、自国の生産活動に必要な物資の供給が外国から途絶えたためだ。

他方、中国、ヨーロッパ、アメリカ、そしてその後に世界中の多くの国が採用した隔離戦略では、労働者ならびに消費者の密集が禁止された。したがって、これらの国では社会の機能を維持するのに必須の立場の人々しか就労できなかった。

それらの職業部門を列挙すると、医療、軍、警察、警備業、道路管理業、運送業、食料品販売業、農業、食肉処理業、食品加工業、漁業、エネルギー産業、衛生管理業、水事業、テレコミュニケーション事業、IT事業、宅配業、そして、最低限の公共交通機関と公共事業だ(職人のように、少人数で働く職業も就労を続けられたかもしれない)。

これらの職業部門では、国によって就業者の30%から40%ほどが働いている。だが、社会は彼らの働きに対して充分な感謝の念を示していない。

先述以外の業種の工場、作業場、工事現場、商店は閉鎖された。学校、大学、レストラン、美容室、バー、ホテル、画廊、映画館、劇場、コンサート会場、スタジアム、会議場、航空機、クルーズ船、スポーツクラブも閉鎖された。

これらの業界で直接的および間接的に働く人々は失業を強いられる。ガソリンスタンドのように顧客の足が遠のくことによって閉鎖に追い込まれる場合もある。また、一部の書店のように、営業を続けられる業種でありながら閉店を強いられる場合もある。

すでに「大卒者の30%」がテレワークだったアメリカ

今回の危機では、遠隔作業が可能な人々には世界各地でテレワークが導入された。テレワークで就労可能な人口は一般に考えられているよりも多かった。たとえば、官民の管理職、非営利団体の職員、国会議員と地方議員、そして大学教員の大半もテレワークが可能だ。

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かなり以前から大勢の人々がテレワークで働いているアメリカでは、大卒者の30%はしばしば自宅勤務を行う。デンマークをはじめとする北欧諸国の就業者の場合、週2日はテレワークで働くことが多い。彼らの勤務評定は、出勤日数や労働時間数よりも、むしろ成果に基づいて行われる。このような雇用体系により、北欧諸国の女性の就業率は他のどの国よりも格段に高い。

すでにテレワークが導入されているメディアやコールセンターなどで働く人々は、テレワークによる就労をさらに増やすことができる。ヴァーチャルエンターテインメントの分野で働く人々は、新たなコンテンツの制作作業を除けば、すでにテレワークを始めており、今後も増えていくだろう。