古さへの不満や不安を解消するのがリノベーション
最近、中古マンション市場で注目されているキーワードが“リノベーション”だ。リノベーションとは、「改修・改善」を意味する英語だが、「刷新」という意味もある。一般的なリフォームが、リペア=つまりマンションが分譲された当時の機能や性能に戻すための補修を行うことなのに対し、リノベーションと謳うことで、今の生活レベルに合うように機能や性能を引き上げて改修し、刷新することを意味して使われるケースが増えてきた。
リノベーションがなぜ注目されているかといえば、すでに古いマンションのストックが十分あるにもかかわらず、「知らない人が住んだ家より、新しいものがよい」「見た目が汚くて、なんとなく不安」といった理由で敬遠されているからだ。
リクルート住宅総合研究所の調査(既存住宅流通活性化プロジェクト)によると、最終的に新築住宅を購入した人たちが、“中古住宅を買わなかった理由”として第一に挙げたのが、「マイホームは新築住宅のほうが気持ちいいから」だ。これに「価格が妥当なのか判断できなかったから」「リフォーム費用やメンテナンス費用で結局割高になるから」「物件に隠れた不具合がないか心配だったから」と続く。
実際に性能や品質をチェックする方法としては、「外観や内装など見た印象で判断した」という回答も半数近くに上る。見た目程度の判断材料では、古いものへの品質への不安が拭いきれず、新しいもののほうが安心という結論を出していることがわかる。
確かに古いマンションは、今のようにエアコンや電子レンジ、パソコンといった電気機器を大量に使用することや、インターネットが普及することなどを想定して、設計・建設されているわけではない。
しかも、年数が経つほどに、内装は汚れて傷がつき、キッチンや風呂などの設備も古くなっていく。見るからに汚くて、不便そうという印象を受けることだろう。
人間でいえば骨格に相当する部分は、マンションでいえば基本構造部分に当たり、この部分は共用部分なので、手を加えることができない。ところが、血管や内臓に当たる部分、つまりマンションの給排水管や電気配線、給湯能力などは、住宅内であれば一定の機能向上が可能だ。
そこで、マンションの内装や設備を取り除いて骨格部分に戻し、新しい配管・配線を通したり、電気やガスの容量を上げたりしながら、間取りや内装を刷新する改修を施すことで、年数を経た中古マンションを今の新築マンション並みのレベルまで引き上げる。これが、リノベーションなのだ。