「ポッキー」でさえ苦労した参入の難しさ

日本では当たり前に売っているお菓子は、アメリカではかなりのレア商品だ。デリやスーパーで時々見かけるのはハイチュウ、ポッキーくらい。なぜ、日本のお菓子はあまり売っていないのだろうか?

アメリカに進出した日系企業の営業代行を行うニューヨークの現地会社グローバル・セールスフォースによれば、アメリカのスーパーのお菓子の陳列棚は、スニッカーズやフリトレーといった伝統的なブランドの商品で占められているため日本企業の参入が非常に難しい。

導入するのにも莫大な費用が発生し、決まったとしても消費者の目線が行くいい場所をもらえずに販売が落ちる商品も少なくない。

またアメリカで販売する場合、グローバル人材の確保とアメリカの食品基準に合わせる必要があるため、中小企業が多い日本のお菓子メーカーには障壁になっている。

そんな中、江崎グリコは、ポッキーを量販店の最大手ウォルマートのお菓子売り場に送り込むという快挙を成し遂げていて、次の動きが非常に楽しみだ。

そのグリコに参入の難しさについて聞くと、「知名度を活かして、アジア系消費者を中心にアジアのお菓子の中で高いプレゼンスを確保することができましたが、アメリカは日本と比較にならないくらいの圧倒的な多様性があることが市場参入を難しくさせる」という答えだった。

ターゲットを絞る売り方が功を奏した

アメリカで売る難しさはそのダイバーシティにあった。人種、年齢、地域性など、その嗜好は多様で、全員が一様に気に入る商品を売るのは難しい。だからこそニッチなターゲットに届くボックス・サブスクの出番なのだろう。

Bokksuのダニーさんによればアメリカの購入者の8割以上が白人で、すでにアジア人の枠を超えている。彼らはただ売るだけでなく、日本のお菓子や文化のファンコミュニティを作って、消費者の声を丁寧にすくい上げ、扱う商品に反映させながらニーズを広げている。

アメリカという多様性の大海原では、こうしたきめ細かい“人対人”のマーケティングを通じてニーズやテイストをすくい上げることが、未来の市場を創造することにつながる。これから日本商品が海外進出する上での戦略の一つとして大いに注目したい。

※本稿は、JFNのラジオ番組「On The Planet」内のコーナー「NY Future Lab ミレニアル・Z世代研究所」の内容を再構成したものです。

取材協力:New York Marketing Business Action

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