社食は、給料の高い正社員のほうが安い
あのショックから半年以上。「100年に一度」の枕詞が定着した経済危機の波は、企業・家計の隅々に及んでいる。
経営再建中の米シティグループには米国政府が関与を高め、世界規模のリストラはなおも続く。シティバンク銀行のある行員(33歳)がこう話す。
「半年ごとにリストラをやってる。解雇を通告された人はだいたいずっと黙っていて、『実は……今日で終わりなんだ』『そ、そうなんだあー』という感じ」
大手損保勤務の妻(32歳)と共働き。すでに預貯金5000万円、1億円の不動産物件を確保しリタイア生活を夢見る。
同様に危機の波をもろにかぶった国内大手企業も、大規模なリストラ、トップ交代を相次いで発表した。殺伐とした派遣切りが報道されるのは主に自動車・電機大手だが、無論、それだけではない。
「国内金融機関の派遣切りは、他の業界より一足早かったんじゃないですか」
とは、三菱東京UFJ銀行で働く派遣社員だった高松ユリ氏(44歳、仮名)。時給1800円は「できる」ほうだが、年末に派遣切りにあった。
「エリート部署には“さすが”と思う正社員も多かった。ただ、7~8歳下のペーペー(の正社員)でも700万~800万円以上は貰ってるのに、社員食堂では正社員が一食200円、私たちが450円。給料の高いほうがなぜ安い(苦笑)」
独身で年収約320万円だが、往復2000円の交通費は自腹。確定申告でも経費としては認められない。諸事情で大学に進学できず、90年から派遣社員として働き始め、バブル以降の景気変動を体感してきた。「きょう仕事ありますか?」とユリ氏が電話を掛けるのを「聞くのがつらい」と嘆いていた母親が、数年前に脳梗塞に。介護で苦労する日々も、その母親の死去で終わりを告げた。
「貯金は約200万円。年内は何とかなるけど、来年は私、生きていないかも」
別の派遣会社から三菱UFJ証券に派遣されていた大竹芳江氏(仮名、41歳)もつい先日、失職。時給1760円。
「正社員は異動が早いから、必ずしもスペシャリストじゃない。できる派遣社員を煙たがる人もいる。『カネを生まない仕事は派遣にさせろ』などと言われた」
現在、預貯金はゼロ。失業給付金が月15万円。一人暮らしのアパート賃貸料が月6万円。通信費が約3万円。1日中家にいるから光熱費もかさむ。「金融の求人が激減した。40代の派遣は独身、バツイチが多く、みんな生活は大変。子供を私立中学に通わせながら昼夜頑張った末に、精神的におかしくなった人も」