「過去と現在」の比較から改善を促す

テクニック2:“環境要因”と言い訳できないよう過去と現在(時間差)で比較する

上述の例のとおりエリア別に1店舗当たりの売上高を示し、一店舗あたり売上高が低い担当者に改善活動を促しても、「そもそも、地域特性や与えられた環境が異なるから比較にならない」と反論をする担当者もいるかもしれません。このように地域格差が大きく、担当者間同士での比較が難しいようであれば、過去と比べて、悪化しているのか伸びているのかを示すデータを見せます。

ここでは、カレーハウスCOCO壱番屋を展開する、壱番屋の各国の店舗数値を見てみましょう。各国ごとに事情が異なるため、1店舗当たり売上高の水準が大きく異なることは当然なのですが、過去から現在にかけてその数値がどのように変化をしてきたかを比較することで、各エリアが成長してきたのか否かを把握し、成長が芳しくないエリアの責任者に危機感を与え改善に向けて動かすことができるようになります。

ここでは、米国が大きく伸びているにも関わらず、韓国と中国が落ち込んでおり、何らかの対策を打たなければならないと伝えることができます(図表2)。

壱番屋の各国別「客単価」と「回転数/日」の推移
画像=『秒速で人が動く時間活用術』
壱番屋の各国別「客単価」と「回転数/日」の推移

リモート会議では「2人の部下」だけ意識する

テクニック3:説得する相手の顔を2人だけ思い浮かべる

リモート会議だと、相手が理解しているかどうかわかりにくく、全員がわかるようにとくどくど説明してしまいがちですが、もちろんこれは逆効果です。

小早川鳳明『秒速で人が動く時間活用術』(PHP研究所
小早川鳳明『秒速で人が動く時間活用術』(PHP研究所

参加者が多いからといって、全ての参加者を意識して説明をする必要はありません。2人のみを意識して説明をするのが効果的です。

例えば、「最も影響力が大きい部下」と「最も理解が遅い部下」の二人のみ意識するのも一つのやり方です。「最も影響力が大きい部下」を説得できれば、他に理解ができていなかったり反対している部下に対して、勝手に働きかけてくれるようになります。

また、当然、最も理解が遅い部下が理解できるよう作られたデータ資料(図表3)であれば、シンプルで見やすく他の人にとってもわかりやすいものになることでしょう。

私は、会社全体の改善の過程において新人により効率的に営業してもらいたいときに、新人のメンバーでもわかるように、単に顧客ごとに担当者がかけている時間と顧客別利益額の2軸で顧客別にデータを一覧化し、図表3のように散布図で表現しました。

「かけている時間」「顧客別利益額」「散布図」という新人でもわかる指標を用いたのです。

「影響力の大きい部下」と「理解が遅い部下」に向けて話をする
画像=『秒速で人が動く時間活用術』
「影響力の大きい部下」と「理解が遅い部下」に向けて話をする

テレワークで指示が部下に伝わりにくくなった、なかなかチームのメンバーに動いてもらえなくなったと感じたら、具体的に数字の見せ方、伝え方を工夫してみてください。メンバーのやる気を喚起することができるはずです。

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