売れ行きが落ちた「3+1」の原因
新型コロナウイルスの蔓延で、さまざまな業種、多くの企業の売れ行きが落ちた。原因は3つプラスひとつと言えるのではないか。
①工場や事務所の閉鎖による業務の停滞。
②原料、部品などのサプライチェーンが途切れ、生産に支障をきたした。
③商品の供給が追い付かなくなったこともあり、販売店は休止し、結果として販売機会がなくなった。
この3つに加えたプラスワンとは環境変化により、商品の魅力が減じたことだ。たとえば、飲食店、宿泊業、土産物店がそれにあたる。商品はあるのだけれど、感染を恐れた人たちは足を運ばなくなった。テーマパーク、映画、演劇、ライブコンサートといったエンターテインメントも環境変化により販売機会が急減している。
そして、シェアリングビジネスも環境変化の影響を大きく受けた。急成長していたカーシェアリングだったが、コロナ以後、「やっぱりプライベートカーがいい」と自分と家族のための車を買うようになったユーザーの姿が目立つという。
競合が大赤字を出す中、異例の黒字
各国の経済に影響を与えるすそ野の広い産業、自動車産業もまた打撃を受けた。2020年の4月から6月期において、ほぼすべての自動車メーカーは巨額の赤字となっている。
日産は2855億円の赤字だ。ダイムラーは2461億円、フォルクスワーゲンが1976億円、FCA(フィアット、クライスラー)も1277億円の赤字だ。ホンダは808億円でGMも796億円という大きな赤字となった。
ところが、ただ1社、同じ期にトヨタだけは1588億円の黒字を達成した。
フォルクスワーゲンにしろ、日産、ホンダにしろ、歴史のある国際的な大企業だ。入社した人間の能力がトヨタの人間と大きく違うとは考えにくい。
「じゃあ、何が違うんだ。トヨタは他社よりどこが優れているんだ?」
答えは、危機管理であり、危機への対処だ。新型コロナの蔓延という危機に際して、トヨタは適確に対応した。それに尽きる。元々トヨタには危機管理のノウハウ、危機へ対処するための知恵と体質があった。それがうまく機能したのである。