テスラが時価総額で「トヨタ超え」

創業1937年、83年の歴史を積み重ねて生産管理技術を磨き、ガソリン車からハイブリッド車(HV)、EVに燃料電池車と幅広く事業展開してきたトヨタ。対してテスラは新興のEV専業メーカーである。量産化に不可欠な生産管理技術の点では、まだ課題も多い。そんなテスラが時価総額で「トヨタ超え」を果たしたことは、自動車業界の大きな構造変化を象徴するトピックスといえるだろう。

株式時価総額は株価に発行済株式数を掛け合わせたもので、現在の業績に対する評価だけではなく、将来に対する期待値がそこには込められている。年間1000万台以上のクルマを製造販売している高収益企業のトヨタより高いテスラの期待値は何かといえば、1つはもちろんEVだ。

100年に1度と言われる自動車業界の変革期を象徴するキーワードは「CASE」と称される。「Connected(接続)」「Autonomous(自動運転)」「Shared(共有)」「Electric(電気自動車)」の4つの言葉の頭文字を組み合わせた造語だが、テスラは「E」はもちろんのこと、「C」「A」「S」のカテゴリーでも次世代技術を先取りしたユニークな取り組みが高く評価されている。

たとえばシェアサービス事業については、イーロン・マスクCEOは完全自動運転のEVによるロボットタクシー(ロボタクシー)事業を20年に実現するとぶち上げた。テスラ車をリース契約しているオーナーは、空いている時間帯にマイカーをロボタクシーの配車サービスに充てて、収益(運賃)を上げられるビジネスモデルだという。

無人のロボタクシーを操るのは、同社の自動運転システムである。自動運転技術の開発競争では、Googleの兄弟会社である自動運転車開発企業「Waymo(ウェイモ)」とともに、テスラもフロントランナーの一角を占めている。自動運転の技術は膨大な走行データを解析することで磨かれていく。ウェイモの強みは圧倒的な公道での走行実績と言われているが、テスラの場合は自動運転レベル2(渋滞時の先行車追従システムなどの部分的自動運転)を標準装備した市販車から走行データを集積している。

テスラ車はコネクテッドカー(ネットに常時接続してオンライン上のさまざまなサービスとつながった車)であり、道路状況や路面状況、他の車の動きなどを検知した情報を収集している。そうやって蓄積された膨大な走行データをAIが学習して、自動運転のレベルをハイピッチで高めているのだ。イーロン・マスクCEOは「レベル5、つまり完全自動運転のための基本機能の実現は非常に近い」と語っている。