スピーチ下手日本人のための訓練その3
【スピーチを練習する】
スピーチは、聴き手を前にして、声に出すこと。自分を人目にさらすことである。自分の声や表情や態度は、自分の思うようにコントロールできない。でも、それを含めてスピーチである。練習して、場数を踏むしかない。
聴き手を確保するのがむずかしい。そこで、スピーチクラブをつくってはどうか。
ネットで「スピーチクラブ」やりませんか、と呼びかける。5人ぐらい集まると、ちょうどよい。言い出しっぺが世話人となって、Zoomを開く。どんなテーマでスピーチするか決める。長さは短め(800字くらい)がよいだろう。
原稿を書いて世話人に送る。世話人は誰が書いたかわからないようA~Eと記号にして、みなで検討会を開く。「Aはここをこうしたほうがいいですね……」。誰の原稿がわからないから、安心してコメントできる。必要なら、もう一回、検討会を開く。
そして、発表会。順番に、自分の原稿をスピーチする。聴き手の人びとは、よかったところをほめる。元気づける。こうしたら、というコメントは少なめにする。そして解散。新しいメンバーでまた集まる。
という練習を繰り返せば、誰でもだんだんうまくなる。メンバーの気が合えば、ずっと続く集まりにしてもよい。とにかくスピーチは、実際にやることが大事。機会がなければ、つくればいいのだ。
日本にもかつて「スピーチの功労者」がいた
日本にスピーチ文化を根づかせないといけないと、気がついたのは福澤諭吉だ。演説会を組織し、ポケットマネーをはたいて三田に演説館を建てた。この建物は、いまも残っている。
議会政治と帝国憲法を機能させるのに、スピーチが大事だと命をかけたのは、斎藤隆夫だ。軍部や主流政治家が不愉快になるのを承知で、議会で堂々と正論をのべた。粛軍演説など歴史に残る演説を何回もしている。その智力と勇気は敬服に値する。
ビジネスリーダーは、これからスピーチで時代を開くことになる。資金はもうあまりない。賢明な知恵と人間力で、組織を導かねばならない。
英語が多少下手でも、内容がしっかりしていることが大事。部下に演説原稿を任せている場合ではない。私の『パワースピーチ入門』(角川新書)を読んで勉強してほしい。