危機のなか、信頼されるリーダーにはどんな共通点があるのか。印象戦略コンサルタントの乳原佳代氏は「ドイツのメルケル首相など、コロナ禍で女性リーダーに注目が集まった。高評価の要因は見せ方を強く意識した『セルフプロデュース術』だ」という——。
2020年3月18日、アンゲラ・メルケルはテレビの演説で、コロナウイルスの大流行との戦いを「第2次世界大戦以来最大の課題」と形容
写真=AFP/時事通信フォト
2020年3月18日、アンゲラ・メルケルはテレビの演説で、コロナウイルスの大流行との戦いを「第2次世界大戦以来最大の課題」と形容

評価を上げたリーダーから学べるセルフプロデュース術

コロナ禍で、各国の首脳が国民に向けて自粛要請やロックダウンのメッセージを発令したことは記憶に新しい。世界が危機的な状況に直面するなか、各国の政策や首脳のプレゼンス、危機管理能力が比較される機会となった。

活躍が際立ったのは、台湾の蔡英文総統首相やニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相をはじめとする女性首脳だ。特に話題となったのは、ドイツのアンゲラ・メルケル首相の3月18日のスピーチである。

英ガーディアン紙は、3月下旬にはメルケル首相の支持率が79%になったと報じた。3月上旬に比べて11ポイントも急上昇した。

スピーチは「聞く」ではなく「見る」もの

メルケル首相のスピーチは、なぜ評価されたのか。その理由のひとつは「視覚で国民にアプローチした」からだろう。

このスピーチは、連邦議会議事堂を望む国旗とEU旗を背景に威厳ある部屋で収録された。ポーディアム(演台)ではなく、執務デスク越しに着座することで、リラックスした雰囲気とともに重厚感を演出している。服装は、普段からメルケル首相が好む青のジャケット。青は色彩心理的に誠実な姿勢と人々の心を静める効果がある。