女性リーダーがスピーチに強い理由

ジョージタウン大学教授 デボラ・タネン氏によると、男性は会話の中に潜む上下関係を決めるパワーダイナミクス(権限の力学)に敏感な傾向が、女性は関係を築くラポールダイナミクス(親密さの力学)に反応する傾向があるという(※2)。そのため女性は他者を立てる話し方をし、相手を見下していると取られかねない内容は和らげて表現する傾向がある。

※2:ハーバード・ビジネス・レビュー編集部『コミュニケーションの教科書』(ダイヤモンド社)

男性首脳の中には、自身の考えを押し通すため科学的根拠を無視する者もいるが、女性首脳は、いかに権威ある立場であろうが、親密さと同時に自分の存在意義を意識した振る舞いを欠かさなかった。

ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は会見で、「私たちが指示することは、常に完璧ではないでしょう。でも、私たちがしていることは、基本的に正しいものです」とへりくだりも見せた。権限の力学を重んじる男性には難しいものだ。

アーダーン首相はフェイスブックに投稿した動画も話題になった。トレーナー姿で、国民の質問に答えたり、子供を寝かしつけたりした後は、首相の母性とリラックスした雰囲気を国民に見せ、時間を共有した。不安を抱えた国民に対し、親密さの力学の下、常に人々に寄り添い、仲間を増やし、合意形成を図っていったのだ。

「危機の時代」の寄り添う姿勢や言葉の選び方

このコロナ禍に、私たちは数々の分断を経験した。人種、貧富、職業、ジェンダー、自粛警察……。新しい生活様式では、こうした分断を避け、自分対聴衆といった軸を作らないラポールダイナミクスを意識する必要があることが、各国の女性リーダーから分かるだろう。

以前より、他人と会うことに対し、慎重にならなければならない分、相手に寄り添う姿勢や、言葉の選び方がより重要になったのは間違いない。まずは、Zoomで親身に話しかけるところから始めてみるのはいかがだろうか。

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