ストライキの実施などで、ますます先行きが不透明なギリシャの財政危機。ユーロ圏諸国は、危機の飛び火を防ぐため、ギリシャ救済に本腰を入れて取り組み始めた。

ギリシャ「金融支援プログラム」の3つの焦点

「『PIIGS』の躓き、ユーロ崩壊の危機」と題して、3月初めの段階の状況を踏まえて、ギリシャの財政危機について執筆した。そのなかで、「ギリシャ国内で公務員労働組合組織がこの財政再建策に反対して、ストライキを行うなどの抵抗勢力が存在することも、ギリシャの財政再建計画の実現を一層困難なものとしている」と指摘した。その危惧が実際に起こった。ギリシャで労働組合組織が、財政再建計画のための緊縮財政に反対して、空港、鉄道、病院、学校でストライキを実施し、ギリシャは麻痺状態となった。さらに、5月5日には3人の死者が出るという事態に発展した。ギリシャの財政危機は、ここに来て、財政再建計画に反対する労働組合組織の抗議行動が沈静化するか否かに依存する状況となった。労働組合組織の抗議行動が沈静化し、麻痺状態が解消すれば、財政再建計画の実施に向けて動き出すことになるが、そうでない場合には財政再建計画の実現は遠のくことになりかねない。

このような緊迫した状況のなか、ギリシャの財政危機に対してユーロ圏諸国が5月7日の緊急首脳会議で800億ユーロの金融支援、そして、国際通貨基金(IMF)が5月9日の理事会で300億ユーロの金融支援を行うことを決定した。両者の合計1100億ユーロがギリシャへ金融支援される。ギリシャの名目国内総生産(GDP・2009年)が2374億ユーロであることと比較すると、GDPのほぼ半分の金融支援を受けることとなる。また、09年末時点の公的債務残高がGDP比の115%、すなわち、2732億ユーロである。ユーロ圏諸国とIMFからの金融支援は、その公的債務残高の半分弱をカバーする。この1100億ユーロのギリシャへの金融支援に寄せる期待は、ギリシャのみならずユーロ圏諸国にとっても大きい。

IMFによれば、ギリシャの今後の財政状況等の推移について次のような見通しを立てている。09年から11年にかけてマイナスの実質GDP成長率から、12年にプラスに転じて、15年には2.7%の実質GDP成長率に達する。財政収支は、09年のGDP比13.6%の赤字から15年にはGDP比2.0%の赤字へ縮小すると計画している。そのため、公的債務残高は、09年末のGDP比115%から15年末には140%に累積することにとどめる。さらに、経常収支は、09年にGDP比11.7%の赤字から15年にGDP比1.9%に縮小する一方、対外純債務は、09年の対GDP比86%から15年に102%へ累積するにとどめる。