「成長」といって想起されるのは、20~30代の若手社員であることが多い。しかし、企業にとって重要なのは、実は40代以上の社員が「学ぶ」ことにある、と筆者は説く。
戦略と市場の差別化には働く人の成長が不可欠
社員の成長は、組織活性化の源泉である。誰でも振り返ってみればわかるように、昨日までできなかったことができたときの喜びは、先へと進む原動力となる。多くの人にとって、成長感をもつとき、大いに働きがいを感じ、意欲が高まるのである。また、こうした仕事を通じての成長や成長感を、働く場所の選択において重視する人材も増えてきた。
さらに、社員の成長は、経営の視点からも重要である。競争においては、いつも同じことをしていては、いずれは競争相手に追い抜かれる。常に新たな市場を模索し、ほかとは異なった戦略をもって、そこに果敢に切り込むのがビジネスの鉄則である。戦略と市場の差別化は、働く人の成長なくしては達成できない。
ちなみに、ここでいう「社員の成長」とは、換言すれば、働く人の学びである。企業における人材の成長は、一人ひとりの学びのプロセスが基盤だからだ。なかでも、キャリアの初期は、どちらかと言えば、縦方向の学びが中心である。与えられた仕事をこなすスキルから始まって、基礎的な職務遂行能力を身につけ、その後、専門性を高めたり、管理能力やプロジェクトマネジメント力を獲得したり、いずれにしても上に積み上げていくタイプの学習である。これを「縦の成長」と呼ぼう。
ただ、現在、もうひとつ重要になってきている学びに、キャリア中期以降(40代前半ぐらいから)、いわゆる「貢献期」における学びや成長がある。背景のひとつには、企業経営の変化があるだろう。現在、多くの企業で、事業の再編や、他企業との事業統合など、ダイナミックな戦略が展開されている。また、多くの企業で、経営のグローバル化が本気モードに入っている。
このような経営環境で、今、企業が成長し、変化し続けていくためには、貢献期に入った人材の学習や成長がその基盤となる。企業にとって、成長を期待するのは、キャリア初期にある人材だけではダメなのである。なぜならば、企業の変革は、貢献期の人材が主体となって組織を変えることで、初めて達成されるからである。当然のことだが、変革は、キャリア初期の人材に任せてはおけない。貢献期の人材が、環境と戦略の変化に対応し、新たな能力を獲得することが求められる時代に入ったのである。