「すぐ近くの店なのに、到着が遅すぎる」の裏事情

もちろん担当配達員が決まった時点で、その配達員の位置と到着予定時間は注文客のアプリに届くようになっているのだが、最初の操作ですでに注文が完了していると思い込んでいる客は、そんな通知をしっかり見ることはない。

「通知を見ていたとしても、トラブルになることはあります。ウーバーは経路をまったく無視した直線距離で所要時間を計算するので、アプリには実際よりかなり早い時間が表示されるんです。だからいずれにしても、繁忙時間帯の注文客は『すぐ近くの店の商品を注文したのに、到着が遅すぎる』とイライラを募らせてしまうんですよ」

そうなると少しでも早く配達し、客からのマイナス評価を回避したいと思うようになる。その結果、信号無視、急な進路変更、車道の右側通行、歩道上を猛スピードで飛ばす、といった交通法規無視や危険運転が起きがちなようだ。

またGPSで現在位置が表示されることも、配達員の大きなプレッシャーになっている。

「繁忙時間帯では、同じ店で一度に2件分の注文商品を受け取り、2カ所へ続けて配達することがあります。しかし配達場所は必ずしも同じ経路上ではなく、お店を挟んでそれぞれ逆方向にあることも。ですが注文者はそんな事情は知らないので、2件目の客にはしばしば『なんで逆方向へ走ってたんだ』と問い詰められるんです。それがいやだから、配達時間を短縮しようとむちゃな走りをする配達員もいると聞きます」

危険運転に拍車をかける「ボーナス制度」の存在

各人が持つスマホのGPS機能は、配達員用アプリでは、届け先までのナビ画面の黒子としても働く。ところがそのナビ画面も、トラブルを招く元になってしまう。

「目的地近くになると、どうしてもナビ画面を見ながらの運転にならざるをえません。つまり前方不注意の状態で走っているんですから、路上の急な変化に対応できるはずがない」

加えて、配達ごとの報酬とは別に設けられているボーナス制度も、危険運転に拍車をかけている。

「配達1件あたりの報酬は、東京だと近場の場合で400円前後、遠くまで届けるおいしい仕事でも600~700円程度。でも雨の日になると、1日のうち8回配達するといくら、12回配達するといくらという区切りで、ボーナスが出るんです。また天候だけでなく、月曜から木曜までの間に例えば95回配達したら1万7000円、110回なら2万2000円といったボーナスもあります。そうなるとボーナス直前の配達員は、何とか規定回数をクリアしようと運転が荒くなりがちです」