コロナ禍のビール需要は縮小傾向
長引く新型コロナウイルスの影響により飲食業界とともに打撃を受けているのがビール業界です。国内ビール会社の大手は、サントリーホールディングス、キリンホールディングス、アサヒグループホールディングス、サッポロホールディングスの4社ですが、直近決算公表値を見ると、それぞれ少なからず業績が悪化しています。2019年の国内ビール類(ビール、発泡酒、第3のビール)市場は数量ベースで前年割れ、市場の縮小は15年連続となっている中で、今回のコロナ禍はそれに拍車をかけました。
緊急事態宣言が出された4月、各社ビール販売実績が前年同期比で約5割と深刻な影響が出ています。全体的な傾向として、外出自粛に伴う巣ごもり需要により、一般家庭向け商品の販売は堅調に増加した一方で、それ以上に居酒屋やレストランなどの業務用酒類の販売が減少したようです。
具体的に各社の財務数値を見てみます。サントリーHDは非上場会社のため各四半期の適時開示は行っていませんが、他3社は1~3月までの実績を公表しています。売上高の前年同期比は、キリンHDが△2.3%サッポロHDが△1.1%、そしてアサヒHDが△4.7%となりました。外出自粛が全国で本格化した4~5月の影響が含まれる第二四半期は、より悪化する可能性があります。事業利益で比較すると、キリンHDが△11.0%、サッポロHDが△7.0%なのに対し、アサヒHDは△36.0%と最も影響を受けています。
なぜ今回のコロナ禍により、アサヒHDの業績が最も悪化し、その他2社の悪化は相対的に軽微で済んだのか。各社セグメント情報から考察してみたいと思います。