解散することすらかなわない

ところが、肝心の安倍政権は通常国会閉会後にさらなる愚策を重ねており、臨時国会冒頭の解散すら難しくなってきている。「GoToトラベル」を巡る一連の無計画性および矛盾ぶりは驚くべきものであり、日本国民の誰の目から見ても政府内部で混乱していることがバレバレであった。国内観光業がその収入の大半を占める国内旅行者の足がすぐにでも回復することを望んでいることは理解できる。しかし、マスメディアが毎日のように新規の新型コロナウイルス感染者数をあおり立てる状況では円滑な政策の実行が難しいことは最初から分かっていたことだ。

地方に住む筆者の知り合いが口をそろえて言うことは「新型コロナウイルスに感染すること自体は全く怖くない。しかし、仮に感染した場合に起きる近所の住人からの嫌がらせが怖い。この場所に住み続けることが難しくなる可能性すらある」というものだ。

前近代的な村社会の後進性を象徴するような話であるが、実際に地方に住む人のリアルな感覚ではそのようなこともあるのだろう。「GoToトラベル」は日本人の後進性を甘く見ており、病気自体よりも感染者へのいじめ行為による社会問題の発生を恐れる現場の人々の心の問題を軽視し過ぎているように思う。

思い付きにすぎない愚策の数々

新型コロナウイルス対策の愚策のシンボルと言えば「アベノマスク」である。配布自体が非常に遅く、そして不良品が多数混入していたことから悪評だらけであった政策だ。こちらもいまだに保育園や介護施設向けの特定業種に向けてのマスクが延々と生産されている。既にマスクは市場で出回っており、暑苦しいだけのアベノマスクの存在価値は低下しているが、それでも一度始めたお役所仕事を取りやめることは難しく生産が継続しているのだ。アベノマスクは安倍首相に寄生する官邸官僚のアイデアだという。

海外では新型コロナウイルスとの闘いを戦争の一種とする見方も存在しているが、日本政府も旧大日本帝国軍のような終わりの見えない消耗戦を展開している。前回、感染者数が増加しても必ずしも何かするわけでもなく、そうかといって安全を宣言することもなく、担当大臣や有識者などが日本国民をひたすら言葉で脅し続けて活動を委縮させる行為は不毛としか言いようがない。

しかも、政府の言動の一つひとつが場当たり的であり、まるでただの思い付きを政策にして何兆円、何千億円という予算を湯水のごとく使い続けている。そして、これから始まる来年度予算の概算要求にはコロナ対策を称する無計画・無秩序なバラマキが大量に盛り込まれて、利権まみれのろくでもない政策が並ぶことになるだろう。