そして今トランプ氏が力を入れているのは、南部を中心に問題になっている人種差別主義者の銅像の撤去問題だ。これを撤去すべきかどうかで世論は真っ二つに割れている。撤去賛成派は、銅像は黒人から見れば痛みと侮辱の象徴であり、分断の原因になっていると撤去を叫んでいる。一方、トランプ氏をはじめ反対派は歴史の遺産として残すべきだとしているが、トランプ氏は記念碑や像の破壊に禁固刑を科す大統領令まで出して反対派にアピールしている。白人優位社会の基盤を失う恐怖をあおっているのである。

いびつな状況を作り上げた米メディア

トランプ支持者たちは差別を自認し、本当に人種の分断を望んでいるのだろうか? 前述のタルサで行われた集会に参加した支持者のインタビューを新聞やテレビで見て気づくことがあった。

取材に応じた支持者は「トランプ氏は全ての人種の平等を願っていると信じている」というような発言をしていて、どうやら彼らはトランプ氏が人種差別主義者だとは思っていないようだった。

このいびつな状況を生んだ原因として思い当たるのはやはりメディアだ。トランプ支持者にとって、マスメディアはイーストコースト・エリートが作ったものであり、リベラルばかりよく取り上げて地方の保守的な意見をないがしろにしている、メディアが報じる情報の多くはフェイクニュースであると信じている。

熱烈なトランプサポーターの中には、そうした理由で一般的なニュースを見ない者も少なくない。見るのはトランプ氏お墨付きの保守派「フォックスTV」、そして前述した極右のブレイズTV、One Americaネットワーク(いずれもケーブルテレビ)、論調が過激なあまりケーブルやユーチューブからも締め出されたオンラインメディアなど。そしてソーシャルメディアにおいても、彼らの目に触れる情報はリベラルや無党派層が見るものとは全く違うものになっている。

分断の影響は新型コロナウイルス対策にも表れている。彼らの中には、地球温暖化が虚偽だと考えているのと同様、コロナウイルスも民主党のでっち上げだと信じている人もいる。ロックダウンは自由な経済活動の妨げだと、銃を持って反対するのもこういう人たちだ。マスクの着用義務は人権の侵害であり、正しい呼吸を妨げ健康を害するものだと真剣に考えている。リベラル層が多い北東部の州からマスク着用が始まったため、それに対する反抗心も強い。