こうした手法により、大量の情報や広告を受け手のSNSやメッセージに氾濫させることで、何が真実なのかが見えなくなる効果を狙うという、現代の独裁者が反対勢力に対して使う手法でもあるともいわれている。それだけ大量に情報フィルターを通したら、平和的なデモであっても危険なものに見えてしまうだろう。

今やアメリカ人の7割近くがブラックライブスマターを平和的な人種差別反対運動としてサポートしている中で、トランプ支持者は全く逆の理解をして、存在しないアンティファにおびえるようなことも起きている。

「トランプに熱狂」する人は何者なのか

そもそも、トランプ氏の支持層とはどんな人々なのか。トランプ氏は地方のブルーカラーの白人が持つ、イーストコーストの都市部エリートに対するコンプレックスと、有色人種に対して持っている優越感と恐れを巧みにくすぐることで、岩盤支持層を固めて僅差で当選した。この分断の維持が非常に重要と考えていることは、今もあらゆる発言に反映されていることから分かる。

6月20日にオクラホマ州で行われた集会は、会場になったタルサにもメッセージが込められている。タルサという場所は99年前に白人による黒人約300人の虐殺事件が起きた場所だ。しかも、当初は南部の黒人奴隷が解放された記念日に当たる19日に開催する予定だった(反対運動が起きて1日ずらした)。あえて黒人の歴史を踏みにじるような意図を感じる。

集会でトランプ氏は、これまで「チャイナウイルス」と呼び続けていた新型コロナウイルスを、今回はダジャレも入れて「カンフルー」=カンフー+フル(インフルエンザ)と呼んだ。チャイナウイルスと同様の差別的な言い方だ。

その直後にアリゾナで行われた集会では、集まった支持者がトランプ氏と「カンフルー」コールの掛け合いで大いに盛り上がった。かつてのヒラリーに対する「ロック・ハー・アップ(彼女を牢獄につなげ)」を思い出させる。

「白人優位」でなくなる不安をあおっていく

もしかすると彼らはトランプらしい面白いジョークだな、中国人をおちょくっているな、くらいにしか感じないのかもしれない。日本人の私たちがもし「ジャパンウイルス」と言われたらどんな気持ちになるかと想像すれば、このような発言を笑うことはできないはずだ。そして中国人のことは、おちょくっていい対象だと思っている。

これが人種差別と感じられない人は、自分も多かれ少なかれ人種差別主義者なのだが、トランプ氏を熱烈に支持する彼らはおそらくそれに気づいていないのだろう。