魚を食べていればがんは予防できるか?

どうして魚が健康に有効なのか

島国である我が日本で、国民食として馴染み深い魚。ところが、最近では、「内臓が苦手」「小骨を取るのが面倒」などといわれて、残念ながら若者を中心に敬遠されがちです。実は、総論で示したように、魚は体にとても良い食品。そこで、ここでは「どうして魚が健康に有効なのか」を、エビデンスに基づいてご紹介しましょう。魚の健康効果を見直し、メーンディッシュとして、ぜひ活用してください。

魚の摂取量と死亡率との関係

12の観察研究のデータ(対象は合計67万人)を統合解析したメタアナリシスが2016年に発表されたのですが、その結果、魚を1日60グラム食べていた人は、全く食べなかった人よりも死亡率が12%低いことがわかりました(もっとも、魚を60グラム以上摂っても、死亡率は低下しなかったとの研究結果も出ている)。また、別のメタアナリシスによれば、魚を1日当たり85~170グラム食べていた人は、全く食べていなかった人に比べて、心筋梗塞によって死亡するリスクが36%も低かったとのことです。

そのほか、魚を食べることで、肺がんや大腸がんになるリスクが下がるという研究報告もあります。前立腺がんの場合は、魚を食べることで発症するリスクは下がらないのですが、死亡するリスクは下がるといった、興味深い研究データも示されています。

ところで、ひと口に魚といっても、タイやヒラメ、サケ、ウナギ、アユといった具合に、さまざまな種類がありますが、具体的にどんな魚を食べればいいのでしょうか。結論からいえば、いろいろな魚を日替わりで食べたほうがいいと、私は考えます。というのも、魚全般についての健康効果はわかっているのですが、特定の魚についての健康効果については、確かなエビデンスがないからです。それに、魚については近年、環境汚染による水銀やPCB(ポリ塩化ビフェニル)、ダイオキシンといった有害物質の蓄積も指摘されているため、複数の種類の魚を食べることで、健康上のリスクを分散しておいたほうが得策です。

とはいえ、魚の場合、「オメガ3脂肪酸」という脂肪成分の健康効果が、高いエビデンスのレベルで示されています。例えば、イタリアなどの研究者が1993~95年に行ったランダム化比較試験によると、心筋梗塞を起こした患者さん1万人のうち、1日1グラムのオメガ3脂肪酸を3~5年服用したグループは、服用しなかったグループよりも、死亡率が14%低下しました。